HMM 1966/8 No.124

ワイリーの中編だけで満足しておきましょうか。

題名 作者 評点 コメント
やすやすとは殺されない フィリップ・ワイリー 8.0 見込まれて後継者となった男は殺人の捜査に乗り出す。ハッピーエンドもあって、楽しく読めるのが良い。
ジャコバス・メリフロア博士の最後の患者 ミンドレット・ロード 5.0 不思議な女患者につきまとわれる医者の話。ラストが決まらない。
当り屋 リング・ラードナー 7.0 語り口が楽しい。でも、ベースボールを知らないと全く面白くないだろうな。アメリカの文化が伺われる一編。
黒い観覧車 レイ・ブラッドベリ 5.0 カーニバルを舞台にした幻想譚。
ある警官の手柄 ウイリアム・マハーグ 3.0 どうしようもなくストーリーテリングが下手くそ。
集金人 モーリス・ルヴェル 6.0 横領した金を秘匿した男は懲役を終え出所するが..。ラストが皮肉だ。
馬に乗った水夫6 アーヴィング・ストーン
死との契約4 スティーヴン・ベッカー
進化した猿たち 星新一
現代のアメリカ風物 中内正則
地獄の仏 石川喬司
紙上殺人現場 大井広介
私の好きなベスト5 田中小実昌
翻訳権今昔20年(1) 宮田昇
hmm5番館 大伴昌司
ミステリ名簿 大伴昌司 小鷹信光
新着書紹介
響きと怒り
落ち合った場所 梅田秀俊
表紙 表紙の言葉 真鍋博
目次・扉 真鍋博
カット 勝呂忠・真鍋博・杉村篤・新井苑子・金森達・池田拓
ページ 202ページ
定価 190円

今号は連載物がページの半分以上を占めている構成。巻頭のフィリップ・ワイリー「やすやすとは殺されない」が好感の持てる作品だったので、まあ良しとしておきましょう。
エッセイの中では、宮田昇の新連載「翻訳権今昔20年」が面白い。筆者は早川書房の人のようだが、戦後すぐ翻訳権仲介を独占していたフォルスター事務所の非情なやり方への恨みつらみなど、敗戦国の悲哀を感じ興味深いものがあります。一方、妙におかしかったのが、スピレインの翻訳権取得を迷っていた際の『編集会議に出せば、その当時入社したばかりの、なんでもぼくの企画に反対する福島正実が反対することはわかりきっている』というフレーズ。何やら私怨が感じられて、笑ってしまった。