HMM 1967/1 No.129

フィッツジェラルドの都会小説一篇に感心。

題名 作者 評点 コメント
ママ、アリアを唱う ジェイムズ・ヤッフェ 7.0 ヤッフェのママシリーズ。こういう本格物は貴重だ。
時はまぼろし ジェラルド・カーシュ 6.5 オチは決まっていないが、文中の話が面白い。
死の遊び レイ・ブラッドベリ 4.0 子供に恐怖する教師。つまらない。
鳩の中の猫 アンソニー・ギルバート 5.0 老人を介護する女は過去の事件の話を聞き出す。長すぎて退屈だし結末は平凡。
青いアネモネ サックス・ローマー 2.0 なんというつまらん話。
グランド・ナショナル・レースの殺人 ジュリアン・シモンズ 6.0 女たらしの毒殺事件をめぐる平凡な本格物。
古風なクリスマス リング・ラードナー 6.5 少し古臭いが世代間の違いを際立たせる手法が面白い。
ふるさとに帰る F・S・フィッツジェラルド 8.5 謎の男から幼馴染の女を守ろうとする主人公。一人称の語り口がうまく後味もよい。
誘拐課 こわれたT エラリイ・クイーン 4.0 よくわからないパズラー。「読者への挑戦」しても誰も解けないでしょうね。
来訪者 ロアルド・ダール 6.5 単なるエロ話のように見せておいて最後に皮肉な結末をつけるのはさすがだ。でも中盤が長すぎる。
馬に乗った水夫10 アーヴィング・ストーン
進化した猿たち 星新一
地獄の仏 石川喬司
紙上殺人現場(最終回) 大井広介
現代のアメリカ風物(最終回) 中内正則
デュッソー館を訪ねて 福島正実
私の好きなベスト5 樹下太郎
翻訳権今昔20年(6) 宮田昇
ノンフィクション・ガイド 青木雨彦
hmm5番館 大伴昌司
新着書紹介
ミステリ名簿 大伴昌司
響きと怒り
いざ決闘 梅田秀俊
表紙 表紙の言葉 真鍋博
目次・扉 真鍋博
カット 勝呂忠・真鍋博・杉村篤・新井苑子・金森達・池田拓
ページ 202ページ
定価 200円

今号の目玉は、ロアルド・ダールの「来訪者」。この頃のダールはもはやミステリレベルを超越した作家でしたから、結構な翻訳料を払ったことでしょう。この作品、ラストのひねりは「さすがダール」と思わせますが、中盤は無駄話が続き冗長な印象を拭えません。解説によると、「アメリカの掲載先であるプレイボーイ誌は内容を書き換えている」とありますが、この部分をカットしたのかもしれません。

今回印象に残ったのは、F・S・フィッツジェラルドの「ふるさとに帰る」という作品。ヤクザ風の男につきまとわれているヒロインと、それを一途に守ろうとする主人公の正義感、幻想的なラストもマッチしてなかなか良い話でした。

また、この号でEQMM時代から長らく連載されていた大井広介「紙上殺人現場」と中内正則「現代のアメリカ風物」が最終回。紙面刷新の一環でしょうか。