HMM 1967/5 No.133

「新青年」の三作品が圧倒的な出来で読ませます。

題名 作者 評点 コメント
アルスター切手の謎 ロバート・L・フィッシュ 7.0 例によって趣向は面白いのだが、ラストのオチがよくわからない。
終列車 フレドリック・ブラウン 4.0 ラストが決まらない。
カメラ・マニア パトリシア・ハイスミス 4.0 取られた写真を取り戻そうとする殺し屋。オチがつまらない。
人質 ドン・スタンフォード 6.5 誘拐事件の解決を強要された男。設定が面白い。
ウェスタリーを過ぎて ロバート・M・コーツ 2.0 何を書きたいのかわからない。
悪夢 パメラ・ジェイン・キング 3.0 14歳の少女の作品らしいが、下品な出来。
小男のスパイ エラリイ・クイーン 4.0 相変わらず解決不能なパズル。
テキサス無宿 谷譲次 4.0 こういう小説が受けた時代もあった、ということか。
あやかしの鼓 夢野久作 7.5 「あやかしの鼓」に翻弄される一族の因縁話なのだが、まだ古びていない。
ガストン・ルルー 8.0 ストーリー展開が面白いし、ラストも決まっている。
聖アレキセイ寺院の惨劇 小栗虫太郎 8.0 まさか法水先生とHMMで会うとは思わなかった。
青列車は13回停る… 第三話 ボーリュウ 罠 ボアロー&ナルスジャック
馬に乗った水夫14 アーヴィング・ストーン
本格探偵小説の二つの変種について 江戸川乱歩
カッコいい「新青年」の話 乾信一郎
「新青年」なんかキライ! 中田雅久
「新青年」回想 中島河太郎
進化した猿たち(最終回) 星新一
ベルが鳴っている(4) 福田淳
序文学ーミステリ125年の歴史ー(4) 小鷹信光
地獄の仏 石川喬司
私の好きなベスト3 谷口勝彦
ミステリ診察室
翻訳権今昔20年(9) 宮田昇
ノンフィクションガイド 青木雨彦
当世ミステリ馬鹿
海外ミステリ消息
響きと怒り
ミステリー駒漫画 アニキ 罠だっ! 梅田秀俊
表紙 表紙の言葉 真鍋博
目次・扉 真鍋博
イラスト 勝呂忠・真鍋博・杉村篤・新井苑子・金森達・池田拓
ページ 218ページ
定価 230円

今号の特集は「懐かしの『新青年』」。後半の100ページがまるまる「新青年」のページとなっており、挿絵はもちろん当時の広告まで復刻されています。

桃源社が国枝史郎の「神州纐纈城」出版したのが昭和43(1968)年。その後「大ロマンの復活」として小栗虫太郎、橘外男などを復刊、「探偵小説リバイバル」ブームを巻き起こしたわけですが、この特集はそれより一年以上前の企画。その先見性は高く評価されるべきでしょう。

取り上げた作家も乱歩や正史ではなく、谷譲次夢野久作小栗虫太郎という凝ったセレクション。さらにガストン・ルルーの翻訳も良い出来で、なかなか見事な出来でした。この特集を引き立たせる意図があったとは思えませんが、英米の作品は今ひとつ。まあ、良しとしましょう。

いずれにしても最近のHMMは編集がバラエティに飛んできていて、ここ数年の不調から抜け出しつつあるように思います。