HMM 1967/8 No.136

「恐怖・怪奇小説特集」はどれも今ひとつ。巻末のブランドだけが輝いています。

題名 作者 評点 コメント
ハリー ローズマリー・ティンパリイ 6.0 幼い少女が夢想する少年。母はその正体にたどり着くのだが..。ラストはひねりもなく平凡。
ねずみ狩り ヘンリー・カットナー 6.0 ネズミの不気味さは伝わってくるが、それだけだ。
死人は憶えている ロバート・E・ハワード 4.0 呪いをかけられた男の末路。古臭い。
淋しい場所 オーガスト・ダーレス 7.0 「淋しい場所」が創り出す怖さの表現がうまい。
見えない金庫 アーサー・ポージス 6.0 室内に隠されたダイヤの所在を指摘する素人探偵。さほどの出来ではない。
ノーク博士の島 ロバート・ブロック 6.5 ノーク博士にインタビューへ行く記者。ハチャメチャな話。
待っている クリストファー・イシャーウッド 4.0 何が書きたいのかよくわからん。
ダマスカスへの道 マイケル・ギルバート 2.0 展開がよくわからないうえにくどい。
墓碑銘 ブラッドリイ・ストリックランド 6.0 死んだと思われた男が戦場から戻ってきたのだが..。ラストは想定通り。
墓を愛した少年 フィッツ=ジェイムズ・オブライエン 3.0 墓を守る少年の話のようだが、つまらない。
就職戦線異常なし チャールズ・マッキントッシュ 3.0 ショートショートだが、オチがわからない。
分裂症の神 クラーク・アシュトン・スミス 6.0 悪魔を呼び出し治療しようとする精神科医。妙におかしい展開。
婚姻飛翔 クリスチアナ・ブランド 8.0 婚前の食卓で毒物死の暴君。美貌の夫人と彼女に惹かれる三人の男。短い作品の中で二重、三重の展開はさすがである。
怪船マジック・クリスチャン号3 テリー・サザーン
馬に乗った水夫17 最終回 アーヴィング・ストーン
復帰妖怪変化夏 矢野浩三郎
怪奇小説の条件 ダシール・ハメット
なぜ幽霊譚を書くか H・R・ウェイクフィールド
ベルが鳴っている 福田淳
地獄の仏 石川喬司
私の好きなベスト5 星新一
ミステリ診察室 各務三郎 ディック・フランシス「穴」
翻訳権今昔20年(最終回) 宮田昇
ノンフィクションガイド 青木雨彦
著者と立ち話 「追いつめる」の生島治郎氏
名作ダイジェスト フランク・グルーバー「ドリス失踪事件」
海外ミステリ消息
怪談実話
響きと怒り
ミステリ駒漫画 混合次元 梅田秀俊
表紙 表紙の言葉 真鍋博
目次・扉 真鍋博
イラスト 勝呂忠・真鍋博・金森達・新井苑子・杉村篤・池田拓・伊藤直樹・岩渕慶造
ページ 202ページ
定価 200円

今号は「恐怖・怪奇小説特集」ということです。本誌はその後、毎年8月号を「幻想と怪奇」特集としていますが、今年がその始まりだったようです。その編集には、仁賀克雄が中心に当たっていたと聞いたことがありますが、今回の巻頭言で『本号は矢野浩三郎氏にお世話になりました。』とあり、矢野も「復帰妖怪変化夏 文学史に観るヴァンパイアの系譜」という一文を投じているので、今号は彼がセレクションの中心だったのかもしれません。

さて、その「恐怖・怪奇小説特集」ですが、酷暑を吹き飛ばす寒気がするような作品を期待しましたが、全体として低調、ぱっとしませんでした。それを払拭したのが、巻末のクリスチアナ・ブランド「婚姻飛翔」。特集とは無縁の作品ですが、さすがブランド。ラストに二重三重の展開を仕掛け、本格ファンを満足させてくれました。