HMM 1969/4 No.156 冒険小説特集

「冒険小説特集」三作はどれも楽しく読めます。これにペンティコーストの「ジェリコ」、フィッシュの「ホームズ」とくれば文句の言いようがありません。

題名 作者 評点 コメント
メアリー ジョン・コリア 5.0 豚に翻弄される夫婦。オチは見当がついてしまう。
ジェリコと偶像 ヒュー・ペンティコースト 7.0 さすがペンティコースト、短い中にしっかりしたミステリを書いている。
標的は過去にあり ジャック・ウイリアムスン 6.0 いささか古臭いスペースオペラだが、過去に戻って状況を変えるという発想は面白い。。
階段は怖い ロバート・トゥーイ 7.5 4人の妻を殺害したと思われる男は5人目の妻を娶るのだが...。オチは笑う。
消えたチェイン=ストローク ロバート・L・フィッシュ 5.0 設定が平凡ですぐわかってしまう。
画家の斑紋 ロバート・L・フィッシュ 7.0 ホ-ムズの美術的才能に驚く一編。
AN+1の信頼 スティーヴン・バー 5.0 ちょっとした思いつきを大袈裟に修飾しただけ。
競売目録 エリザベス・フェラーズ 5.0 ページの埋め草ショートショート。
黒い絨毯 カール・スティヴンスン 7.5 ブラジルの原野を襲うアリの大群と戦う農園主。アリとの激闘というアイデアがすごいな。
はるかなるブロードウェイ コーリイ・フォード 5.0 これまたページの埋め草ショートショート。わびしい話。
逸楽郷の幻影 R・E・ハワード 8.0 蛮人コナン物。砂漠の街に迷い込んだコナンと女。久しぶりに読んだが、やはりハワードは面白い。
クラレンス・ダロウは弁護する(5) アーヴィング・ストーン
新・進化した猿たち 星新一
男性雑誌による現代アメリカのフォークロア 片岡義男 その9 ジョーク・マガジン −− 自分をも笑うことの出来るアメリカ人
みすてり鳥瞰図 福田淳
地獄の仏 石川喬司
異常感覚歳時記 針谷愛 郷里について
紐育の日本人 平尾圭吾 アメリカン・ユーモア(その2)
ミステリ英語道場 中内正利
ミステリ診察室 野口雄司 ドミニック・ファブル「美貌の怪物」
ノンフィクションガイド 青木雨彦 ゆるせ、シャイロック
ミステリ鬼検事
海外ミステリ消息
響きと怒り
ミステリ一駒漫画 梅田秀俊
表紙 表紙の言葉 真鍋博
目次・扉 真鍋博
イラスト 真鍋博・勝呂忠・金森達・新井苑子・杉村篤・池田拓・伊藤直樹・岩渕慶造・桜井一・楢喜八・山野辺進
ページ 202ページ
定価 230円

今号の特集は「冒険小説」。短編では難しいと思われるテーマですが、対象作品は、ジャック・ウイリアムスン「標的は過去にあり」、カール・スティヴンスン「黒い絨毯」、R・E・ハワード「逸楽郷の幻影」の三編。どの作品も読ませます。

ジャック・ウイリアムスンは、冒険小説というより根っからのSF作家で、「宇宙軍団」などの作品が翻訳されています。この作品も宇宙を舞台にしたスペースオペラで悪い出来ではありません。

二作目のカール・スティヴンスンは全く知らない作家ですが、「黒い絨毯」のように押し寄せてくるアリのイメージがすごい。この作品、映画化もされている有名作だったようです。

巻末を飾るハワードの蛮人コナンは、今でこそ言わずとも知れたシリーズですが、当時の読者には馴染みのないものだったと思います。本文中の作家名が「D.E.ハワード」と誤記されていますが、編集部ですら気が付かないレベルだったのでしょう。書誌データには詳しくないので確かなことは言えませんが、今回の作品が本邦初登場なのかもしれません。
翌年の1970年からハヤカワ文庫、創元推理文庫から翻訳が続々と出ることになります。わたしは少し遅れて1970年代後半にこのシリーズを読んでいたのですが、久しぶりに読み返したくなりました。2ヶ月後の「みすてり鬼検事(読者が選ぶ今月のベスト5)」の結果でも、ハワードは高く評価された模様です。

1.逸楽郷の幻影       2.57  
2.黒い絨毯           2.53  
3.標的は過去にあり   1.75  
4.階段は怖い         1.50  
5.メアリー           1.47  
次点 ジェリコと偶像