EQMM 2018/09 No.0 EQMM創刊号から10号までを総括する。

作品の分布について

下記に示すように、ここまでの作品数は全78編。ポイント平均は、6点を0.58ポイント上回っている。

と、まるで経済指標のように偉そうに言ってみるが、私の主観採点に過ぎません。

この平均はすごいですね。作品のレベルがどれだけ高かったかということの証明です。60年後の人間の評価であることも考えると、驚異的な数字だと思います。

総数 平均 偏差 9.0 8.5 8.0 7.5 7.0 6.5 6.0 5.5 5.0 4.0
78 6.58 1.20 2 3 8 10 12 16 11 3 8 5
% 2.56 3.85 10.26 12.82 15.38 20.51 14.10 3.85 10.26 6.41

秀作

8.0ポイント以上は秀作。8.5ポイントはそれを上回る作品と評価します。

全78作で、13作品が秀作。秀作率16.67%という数字も、これまたすごい。
読み応えのある作品が勢揃い、ということですね。

なかでも、特筆すべきは「魔の森の家」と「天外消失」の9ポイント。
これはマイベスト、不動のツートップかもしれないなあ。

題名 作者 評点 コメント 掲載号
魔の森の家 カーター・ディクスン 9.0 三読目だろうが、これは名作です。伏線の張り方がすごいし、最後のHMのセリフも余韻を残す。クイーンの解説もよい。会話文が『』になっているのは訳者乱歩の指定らしい。どういう意図なのだろう。 1956-07-001
天外消失 クレイトン・ロースン 9.0 消失トリックだけでなく、犯人の設定も面白い。傑作でしょう。 1956-10-004
おとなしい兇器 ロアルド・ダール 8.5 有名な作品だが、筋書きを知っていても楽しく読める。 1956-08-002
決断の時 スタンリイ・エリン 8.5 やはりエリンは面白い。モダン・リドルストーリーである。 1956-10-004
スペインの伊達男 スチュアート・パーマー 8.5 中盤の展開から犯人の正体まで、良く出来ている。 1957-03-009
8.5以上の作品 : 5
骨折り損のくたびれもうけ ロス・マクドナルド 8.0 良くできた構成とちょっとしたひねりで読ませる。 1956-10-004
燕京畸譚 ヘレン・マクロイ 8.0 中盤が少し退屈だったが、舞台と相まって良く出来ている。 1956-12-006
奇蹟を解く男 カーター・ディクスン 8.0 密室トリックはつまらないが、H.Mが出てくるだけで楽しい。嫌味なばあさんを書かせると一級品だ。 1957-01-007
正義とはなにか ヒュー・ペンティコースト 8.0 被害者の正体が少し現実的でないが、緊張感のある展開で読ませる。 1957-02-008
告別 ロアルド・ダール 8.0 こういうアイディアがよく浮かぶものだ。 1957-03-009
籬をへだてて シャーロット・アームストロング 8.0 謎は今ひとつだが、構成が面白い。 1957-03-009
11才の証言 Q・パトリック 8.0 語り口と意外性で読ませる。 1957-03-009
身代金 パール・バック 8.0 期待していなかったが、最後まで一気に読ます筆力がすごい。 1957-04-010
8.0の作品 : 8
秀作(8.0以上) : 13 16.67%

作家別頻出度

登場作家はトータル49名。最多登場はオーナーである「エラリイ・クイーン」と「アガサ・クリスティー」の両巨匠でした。
しかし、クイーンの作品は短いパズルのような作品が多いし、クリスティーも今ひとつ。
両者は秀作リストには一作も上がっていません。さほど貢献しているとは言い難いですね。

下記に2作以上登場した作家を一覧表示します。

作家数 :49名
エラリイ・クイーン : 6
アガサ・クリスティー : 6
コーネル・ウールリッチ : 4
スタンリイ・エリン : 3
マイケル・イネス : 3
ロアルド・ダール : 3
ジョン・ディクスン・カー : 2
スチュアート・パーマー : 2
ジェイムズ・ヤッフェ : 2
ロイ・ヴィカーズ : 2
ジェイムズ・M・ケイン : 2
カーター・ディクスン : 2
T・S・ストリブリング : 2
レックス・スタウト : 2
ダシール・ハメット : 2
ニコラス・ブレイク : 2

読むに耐えぬ作品

全78作品中、3ポイント以下はなし。これもすごいことです。