EQMM 2024/11 No.0 HMM129号から140号(1967年)までを総括する。

1967年は、常盤新平編集長5年目、HMM 2年めであります。ここ数年のレベル低下から心機一転を図りたいところですが、さて、どういう結果となりましたでしょうか。


作品の分布について

129号から140号までの作品数は全135編。長編連載は対象から外しています。

最低だった前年(1966年)を更に下回る平均点

1960年(平均6.21)、1961年(平均6.02)、1962年(平均6.05)、1963年(平均5.57)、1964年(平均5.60)、1965年(平均5.40)、1966年(平均5.42)と5点台にまで店名している作品レベルですが、今年(1967年)度の平均値は5.25。なんと更に低下してしまいました。相変わらずの低迷が続いております。

総数 平均 偏差 8.5 8.0 7.5 7.0 6.5 6.0 5.5 5.0 4.5 4.0 3.0 2.0
135 5.25 1.71 2 8 4 14 15 21 1 22 1 27 8 12
% 1.48 5.93 2.96 10.37 11.11 15.56 0.74 16.30 0.74 20.00 5.93 8.89

秀作

8.0ポイント以上は秀作。8.5ポイントはそれを上回る作品と評価します。

題名 作者 評点 コメント 掲載号
ふるさとに帰る F・S・フィッツジェラルド 8.5 謎の男から幼馴染の女を守ろうとする主人公。一人称の語り口がうまく後味もよい。 1967-01-129
日当22セント ジャック・リッチー 8.5 証人の偽証で4年間ムショ暮らしの男が釈放される。お礼参りを恐れる関係者は手を尽くすのだが..。話の展開からラストのオチまでよくできている。 1967-04-132
8.5以上の作品 : 2
われらの時代 ロバート・ブロック 8.0 タイムカプセルの作成に熱中する夫。彼から逃亡するつもりだった妻が見たものは..。ラストが決まっている。 1967-02-130
怪人ルペスキュ氏 H・H・ホームズ 8.0 ルペスキュという妖精に会っているという少年を持て余す母とその友人。裏に隠されたトリックとラストがうまい。 1967-03-131
ガストン・ルルー 8.0 ストーリー展開が面白いし、ラストも決まっている。 1967-05-133
聖アレキセイ寺院の惨劇 小栗虫太郎 8.0 まさか法水先生とHMMで会うとは思わなかった。 1967-05-133
世界一素敵な方 ドナルド・E・ウェストレイク 8.0 予想外の保険金を受け取ることになった中年の秘書。オチが決まっている。 1967-07-135
婚姻飛翔 クリスチアナ・ブランド 8.0 婚前の食卓で毒物死の暴君。美貌の夫人と彼女に惹かれる三人の男。短い作品の中で二重、三重の展開はさすがである。 1967-08-136
パラダイス・キャニヨンの死 フィリップ・ワイリー 8.0 砂漠での射殺事件。逃亡した医師が犯人と目されたが、彼も刺殺体で発見される。軽快な展開で読ませる。 1967-09-137
愛情物語 ヒュー・ペンティコースト 8.0 愛憎関係にある人物像の書き分けうまいうえ、ラストの意外性も決まっている。 1967-11-139
8.0の作品 : 8
秀作(8.0以上) : 10 7.41%

前年4篇(3.57%)であった秀作が、今年度は10篇(7.41%)と大きく改善されており、出来の良い作品が掲載されたことは大きな前進です。後述しますが、「読むに耐えぬ作品」のパーセンテージも下がっているにもかかわらず平均が下がっているのは、「中間層のレベルが低い」ということを示しています。毎月、平均以上の作品を集めることの苦労が伺われる結果となりました。


作家別頻出度

登場作家はトータル106名。

下記に2作以上登場した作家を一覧表示します。

エラリイ・クイーン : 7
ジェイムズ・ヤッフェ : 4
ナイジェル・ニール : 3
スタンリイ・エリン : 3
レイ・ブラッドベリ : 3
レイモンド・チャンドラー : 2
パトリシア・ハイスミス : 2
フィリップ・ワイリー : 2
シャーロット・アームストロング : 2
ジュリアン・シモンズ : 2
アーサー・ポージス : 2
ローレンス・トリート : 2
ロバート・ブロック : 2
アントニー・バウチャー : 2
E・S・ガードナー : 2
ロアルド・ダール : 2
クリスチアナ・ブランド : 2
オーガスト・ダーレス : 2
リング・ラードナー : 2


読むに耐えぬ作品

題名 作者 評点 コメント 掲載号
就職戦線異常なし チャールズ・マッキントッシュ 3.0 ショートショートだが、オチがわからない。 1967-08-136
悪夢 パメラ・ジェイン・キング 3.0 14歳の少女の作品らしいが、下品な出来。 1967-05-133
憎悪の殺人 パトリシア・ハイスミス 3.0 周辺の人間すべてを憎悪する男の妄想話。これが面白いわけないだろう。 1967-11-139
押しこむのにもってこいの、ちいさいが、ごきげんな銀行 イヴァン・M・ワイリー 3.0 つまらない銀行強盗の話。 1967-09-137
墓を愛した少年 フィッツ=ジェイムズ・オブライエン 3.0 墓を守る少年の話のようだが、つまらない。 1967-08-136
街路 アラン・シーガー 3.0 つまらない。 1967-12-140
家計簿の恋 又は、ポール・フェルドスパス氏の唯一の恋物語 アレックス・フィッシャー 3.0 何を書きたいのだろうか。 1967-03-131
鏡よ鏡 ナイジェル・ニール 3.0 差別意識が強く、現代では通用しない話。 1967-03-131
蠅の偶像 ジェイン・ライス 2.0 何というつまらん話。 1967-06-134
月曜日は静かな場所 マージョリ・カールトン 2.0 長々とつまらない話。 1967-06-134
ダマスカスへの道 マイケル・ギルバート 2.0 展開がよくわからないうえにくどい。 1967-08-136
ウェスタリーを過ぎて ロバート・M・コーツ 2.0 何を書きたいのかわからない。 1967-05-133
ザホフ対07 アンドレイ・グリャシキ 2.0 つまらない007のパロディ。読み通すのも一苦労だ。 1967-02-130
基地ふたたび コリン・ワトスン 2.0 何が書きたいのか理解できない。 1967-09-137
ロンドンでお買物 リース・デイヴィス 2.0 ストーリーもオチもまったくつまらない。 1967-10-138
マンゴーの樹の下で エド・レイシイ 2.0 カジノ襲撃の話だが、ひどい出来で読むに耐えない。 1967-10-138
特殊技能 シオドア・スタージョン 2.0 ストーリーがよくわからない。 1967-10-138
プッツィ ルドウィッグ・ベメルマンズ 2.0 よくわからない。 1967-11-139
気楽な稼業ときたもんだ ジェイコブ・ヘイ 2.0 スパイ物のパロディだが、取り柄がない。 1967-11-139
青いアネモネ サックス・ローマー 2.0 なんというつまらん話。 1967-01-129
問題あり(3.0以下) : 20 14.81%

1962年5篇(4.63%)、1963年12篇(9.60%)、1964年15篇(12.10%)、1966年18篇(16.07%)と年々悪化していましたが、今年度は20篇(14.81%)。あまり大きな変化はありません。


1967年総括

読み応えのある作品が増えたのは大きな改善で、月に1作でもそういう作品があれば読者は満足するものです。毎号ショートストーリイを選択してページを埋めていくのは大変な作業でしょうから、中間層のレベルが低下していくのは致し方ないのかもしれません。
また、今年の特集の中では、リバイバルブームに先駆けて「新青年」を取り上げていたのはなかなかお見事、先を見る目があるということでしょう。今年から時期編集長となる太田博こと各務三郎が副編集長として巻頭言に顔を出すようになっています。彼の今後の手腕に期待しておきます。