EQMM 2025/07 No.0 HMM141号から152号(1968年)までを総括する。

1968年は、常盤新平編集長6年目、HMM 3年めであります。ここ数年のレベル低下は著しいですが、さて、どういう結果となりましたでしょうか。


作品の分布について

141号から152号までの作品数は全138編。長編連載は対象から外しています。登場した作家数は114名.

ついに平均点が5点以下になってしまった...

1960年(平均6.21)、1961年(平均6.02)、1962年(平均6.05)、1963年(平均5.57)、1964年(平均5.60)、1965年(平均5.40)、1966年(平均5.42)、1967年(平均5.25)と5点台を低下し続けていた平均点ですが、なんと今年は 4.99 。ついに5点台を割り込むという悲惨なレベルとなってしまいました。

総数 平均 偏差 8.5 8.0 7.5 7.0 6.5 6.0 5.5 5.0 4.0 3.0 2.0
138 4.99 1.79 3 5 6 12 13 16 2 25 26 14 16
% 2.17 3.62 4.35 8.70 9.42 11.59 1.45 18.12 18.84 10.14 11.59

秀作

8.0ポイント以上は秀作。8.5ポイントはそれを上回る作品と評価します。

題名 作者 評点 コメント 掲載号
静かな女 ブルーノ・フィッシャー 8.5 よく出来た中編私立探偵物。速いテンポで快調に進む展開は見事。人物描写もうまく結末に説得力がある。 1968-02-142
最後の一壜 スタンリイ・エリン 8.5 巧みなストーリー展開と終わりのうまさ。さすがである。 1968-04-144
ジェミニイ・クリケット事件 クリスチアナ・ブランド 8.5 その昔これを読んで感動したことを思い出す。 1968-11-151
8.5以上の作品 : 3
サックスに殺意をこめて フレドリック・ブラウン 8.0 中古車販売を営むかつてのバンドマンの周辺で起きる撲殺事件。いささか後味は良くないが、意外なラストが効いている。 1968-02-142
正確無比な時計 コリン・ワトスン 8.0 正確無比だった時計が狂い出した謎を何か。ラストの一行の暗示がうまい。 1968-03-143
色は匂えど リチャード・デミング 8.0 浮気女殺人事件を追う二人の刑事。一人は夫である。ラストのひねりが良く出来ている。 1968-03-143
睡眠恐怖症 小沢正 8.0 吉良上野介になっている夢を見る男は、精神科医のお世話になるのだが..。これはよくできている。 1968-05-145
九本指ジャック アントニー・バウチャー 8.0 SF的な発想とオチが楽しい。 1968-09-149
8.0の作品 : 5
秀作(8.0以上) : 8 5.80%

読ませる作品が一定数あることも事実。要するにレベルの差がひどいということです。


読むに耐えぬ作品

レベル低下を招いた作品一覧。

題名 作者 評点 コメント 掲載号
風を見たのは誰? クリスティン・N・ガヴァン 3.0 つまらない。 1968-12-152
河を渡って P・シャイラー・ミラー 3.0 ダラダラ長いだけの怪奇小説。 1968-11-151
大都会がいっぱい ジョゼフ・ヘラー 3.0 何だこれ。単なるエロ小説じゃないか。 1968-02-142
赤いドレスが似合うとき パトリシア・アン・ホリスター 3.0 つまらないショートショート。 1968-02-142
最後の演奏会 リンダ・ヴィルスヴィック 3.0 人物のかき分けが下手で焦点が絞れない。 1968-10-150
豫感は・・・ メアリイ・ディーシイ 3.0 全く盛り上がらない退屈な話。 1968-04-144
百万ドルの遺産 ドロシー・パーカー 3.0 オチがわかりません。 1968-04-144
泥棒 ヘレン・ハドスン 3.0 つまらない。 1968-05-145
海の見える窓 エスター・カールスン 3.0 出来が悪い。 1968-05-145
牝猫ミナ ジャック・ヨネ 3.0 気分が悪くなる話だ。 1968-08-148
ジレンスキー女史とフィンランド国王 カースン・マッカラーズ 3.0 何を書きたいのだかわからん。 1968-06-146
ふるさと遠く ウォルター・S・テヴィス 3.0 つまらないショートショート。 1968-06-146
コレット ウラディミール・ナボコフ 3.0 つまらない。 1968-06-146
76番目の顔 ジェイムズ・リーサー 3.0 つまらない。 1968-01-141
あたしの名前を呼ばないで ジェームズ・パーディ 2.0 これもひどい。こんな繰り返しパターンは子供でも使わないぞ。 1968-10-150
テキサス氏 ジョゼフ・ヘラー 2.0 わけがわからん。 1968-10-150
五番街の奇蹟 オルガ・マルクス 2.0 つまらない。 1968-10-150
過去への電話 福島正実 2.0 長くくどくおもしろくない。 1968-10-150
理想的な結婚 オーギュスト・ストリンドベリ 2.0 何だこれ。 1968-09-149
黒猫のためのブルース ボリス・ヴィアン 2.0 なんだこれ。これがブラック・ユーモアだったら、読む気にもなれないな。 1968-10-150
ベダズ計画 ジェイムズ・パウエル 2.0 何がなんだか全くわからない話。 1968-01-141
海への悲しい道 ジェラルド・カーシュ 2.0 金策付きた男が殺人を犯し自滅するだけのつまらない話。 1968-08-148
月夜 ビッドパイ 2.0 なにこれ。中学生でももっとマシな話を書くぞ。 1968-08-148
さまざまな誘惑 ウイリアム・サンソム 2.0 ダラダラと長いだけ。 1968-07-147
羊飼いの子 リチャード・ミドルトン 2.0 つまらないショートショート。ページ稼ぎか。 1968-07-147
苦い毒草 フローレンス・V・メイベリ 2.0 支離滅裂な作品。この作家、正気なのか。訳す方もどうかしている。 1968-06-146
アメリカ思想の主潮 アーウィン・ショウ 2.0 これのどこが面白いんだ。 1968-06-146
五行俗謡 -シェークスピア以後 モーリス・ビショップ 2.0 ページの埋草か。 1968-02-142
クレイジー! クレイジー! ドナルド・オグデン・ステュアート 2.0 支離滅裂な話。作者がクレイジーなのではないか。 1968-02-142
冬来りなば アーシュラ・カーティス 2.0 短い話なのに読み続けるのが苦痛。 1968-07-147
問題あり(3.0以下) : 30 21.74%

1962年5篇( 4.63% )、1963年12篇( 9.60% )、1964年15篇( 12.10% )、1966年18篇( 16.07% )、1967年20篇( 14.81% )と年々悪化していましたが、今年度はなんと 20%超え 。もうどうしようもありません。


1968年総括

正直に申し上げて、これぐらいつまらない作品を読まされた年度は初めてです。6年目を迎えた常盤新平編集長は、この翌年1969年に退任するようですが、全く残念な結果となってしまいました。実はすでに各務三郎こと太田博が事実上の編集長になっている模様なので、次年度はその手腕に期待しておきましょう。