Death in the House of Rain ( Szu-yen Lin )

舞台設定は楽しいが、ストーリー展開が平板。このトリックはちょっと...


今回、読むのは...

2006年作の台湾のミステリで、作者自身が英訳しているようです。
Paul Halterの作品で有名なLocked Room Internationalで出版されたものです。
これまた、Kindle unlimited対象になっているので、読んでみました。

この舞台設定はそそるね

山の上にある「雨」をモチーフにした館がこの作品の舞台です。
探偵役が到着するやいなや、大雨による土砂崩れで陸の孤島になる、というのもお約束の展開ですね。
巻頭には館の見取り図、登場人物紹介と、まさしく古典的な構成です。


さて、何が起きるのか。

一年前にこの館では、オーナーであるJingfu Bai、妻のYinghan Qiuとその娘が惨殺されるという惨劇が起きていました。
夫婦は互いに不倫をはたらいており、事件後すぐに夫人の不倫相手であるWeikun Yangが現場を慌てて立ち去るところを目撃され、そのまま逮捕されます。
Yangは無実を訴えますが、その後自殺。これにより、表向きこの事件はクローズされました。

さて、この館を受け継いだ弟のRenze Baiは、アマチュア探偵でもある哲学教授Ruoping Linを招待します。目的は事件の再調査で、Baiには匿名のE-Mailが送られており、それには前オーナー夫婦の死体写真が添付されていました。彼は本当にYangが犯人かどうか少し疑念を抱き始めます。

 館には、そのとき同時に娘のLingshaとその友人が逗留していました。
ここから、Lingshaのクラスメイトに次々に悲劇が襲いかかります。
まずは、“Doll"と言われる美貌のピアニストXiangya Liuと思われる首なし死体が密室内で発見されます。続けて、夜間に呼び出されたもう一人の女性も、絞殺されてしまいます。
バックドアが開いているので、そこから侵入したものと思わますが、足跡が全く残っていないという不可能状況になっているのです。

最後は、ある人物がPCに遺書を残し、密室内で覚悟の自殺を遂げたように思われます。これで事件は一応の解決とされますが、遺書の中には犯行の手段については何も触れられておらず、不可能犯罪の謎は未解決のまま残ってしまいます。

Ruoping Linは、とあることからこの謎を解明します。


結論

 このトリックは、なんとなく検討はつくけど、ある意味すごい。「金田一少年の事件簿」の原作にしたいですね。
でも、活字で読むと怒り出す人のほうが多いんじゃないかな。

ストーリー自体も、ただ事件が次々起こるだけで、平板な展開で高く評価できません。
登場人物にも魅力がありません。プロットに一貫性がないのも今ひとつで、因果はめぐるというような締めもどうでしょう。

というわけで、あまり高い評価はできません。和訳は出ないだろうなあ。


最後に蛇足

  • 中国人の名前が英語で書かれると、どうもわかりにくくていけません。漢字ってわけには行かないから仕方ないけど。
  • いままで「シンドラーのエレベータが一番怖い」と思っていましたが、認識を改めました。