Red Hot Ice ( Frank Kane )

アメリカンハードボイルドの典型のような作品だ。悪くはないが、話の展開が平凡。


Frank Kane ( フランク・ケーン )とは

Frank Kane(1912 - 1968)は、アメリカのハードボイルド作家。
45口径の拳銃でお馴染みの探偵、Johnny Liddelを主人公とした長編29作と、数多くの短編を発表しています。
この手のハードボイルドシリーズは、探偵の一人称、”おれ”で進められるシリーズが多数派ですが、このシリーズは三人称で書かれているのが特徴です。
また、5−60年代に登場した数知れないハードボイルド作家のなかには、派手なアクションや饒舌なおしゃべりばかり、というものも散見しますが、Frank Kaneの作品は、しっかりとしたプロットで支えられています。そういう意味で、わたしのお気に入りの作家です。

翻訳

長編は、Bullet Proof(1951)が久保書店から「弾痕」として訳されているだけです。この作品、わたしの読んだJohnny Liddel物(10冊)の中でも最上位の作品でした。訳者である山下愉一氏のセレクションは、的確だと思います。
短編は、雑誌「マンハント」にて相当数、訳されている模様です。

Prologue Books

Johnny Liddelシリーズは、Dell BooksのPaperback Originalとして出ていたのですが、最近Simon & Shusterから、Prologue Booksとして、eBookで再刊されています。
Amazonでは、そのほとんどがKindle unlimited対象になっているようです。
アメリカでは、古い作品がeBookで再刊されるケースが多いのが羨ましい。日本もそうならないかな。


「Red Hot Ice」の展開は...

1955年の作品です。

話は、Lou Donganという男が所有する飛行機内のギャンブルシーンから始まります。
Laury Laneは、酔いどれの有名金髪女優。彼女は、ここで大負け、12000ドルの負債を作ってしまいます。

さて、Lauryにはジゴロの夫、Edmund Wileyがいますが、彼は新しい金づるを見つけているので、彼女に離婚を求めていました。
Lauryは、その女Juile Laytonと話をつけに行く気でいますが、Agentで友人でもあるAl Murphyは、Johnny Liddelにその護衛を依頼します。
Laureyに同行したLiddel、その夜はLaytonのところでひと悶着あり、話は結局うやむやに決裂します。

次の日、LiddelはMurphyから、Lauryは15万ドルのダイヤ原石を持っているので、これで負債を払うことになるだろうと知らされます。
その引取りの護衛に、Liddelは他社エージェントのTate Morrowを紹介しますが、二人がその場で殺されてしまうという事件が起こります。
警察は、宝石を盗もうとしたTateと抵抗したLauryが相打ちになった、という仮説を立てますが、Liddelはそれに納得しません。Tateの持っていた宝石は小さいもので、15万ドルのダイヤは行方不明になっているからでした。題名の"Hot Ice”(盗まれたダイヤ)は、このことです。
また、その日Al Murphyも銃撃を受け、命からがらLiddelの事務所に駆け込んできます。

ここからLiddelの前に二人組のヒットマンが現れたり、逆襲に転じたLiddelがホテルで新しい死体を発見したり、いいテンポで進んでいきます。後半は、“Hot Ice"をめぐる展開から、LaytonとWiley、Donganなどとの絡みもあって、最終的に、Liddelが真犯人を追い詰めます。


さて、作品の出来は...

短評にも書きましたが、B級ハードボイルドのテンプレートのような作品です。
それなりの設定でプロットも悪くないのですが、犯人の計画は少しずさんでしたね。
最後の章で、Liddelが謎解きをするのですが、さかんに「自分はバカだった、情けない」と繰り返しています。それは作者の言い訳でもあるわけで、今ひとつ評価できない点ともなるわけです。

情けない蛇足

読後気がついたのですが、これ再読でした。2004年にDell Booksで読んでいたことが記録から判明。全く気がつきませんでした。
Liddelじゃないが、情けないなあ。