The Billiard Room Mystery ( Brian Flynn )
こういう結末にもっていくとは。この作家はやってくれるぜ。
Brian Flynn( ブライアン・フリン ) のReprint
2019年の10月から、Brian Flynnの作品が、Dean Street Pressという会社からReprintされ始めています。Flynnは多作家で、森秀俊さんの「世界ミステリ作家辞典」によると、全54冊書いたようですが、今回は初期の10冊が対象の模様。
注目すべきは価格で、紙の書籍だと$15.99(1887円)ですが、eBookだと$2.99(321円)、なんと金額ベースで1/5以下ですね。
個人的に小説の新刊は、eBook以外では買わない主義なので、この価格設定は嬉しいです。日本も、こういうレベルにならないものかなあ。さらに、処女作「The Billiard Room Mystery」は特別ディスカウントなのか、なんと$0.99(109円)です。消費増税後のブックオフ均一本より安いぞ。
これまでに読んだ作品は..
Flynnは、代表作とされる「The Mystery Of The Peacock’s Eye (1928)」を読んだことがあります。こんな感想を書いているのですが、内容はきれいさっぱり忘れました。もう17年も前になるのか。
Author | Title | Publisher | Point | Comment | Date |
---|---|---|---|---|---|
Brian Flynn | The Mystery of the Peacosk’s Eye | Macrae Smith Company | 7.0 | ラストの意外性には感心。通俗的な展開でそれほどの作家でないことは明白だが。 | 2002/01/31 |
悪くない評価です(本当か?)。これは、もう一冊くらい付き合わんといかんでしょう。
メインキャラクター Anthony Bathurst
Flynnの小説で探偵役を務めるのは、Anthony Bathurstという人物です。
彼は、
「類まれなる推理の才能と直感力を持ち、記憶力と運動能力が抜きん出ている」
とのこと。そう、よかったね。
これ以降はわかりませんが、この作品では友人のBill Cunninghamがワトソン役、一人称で事件を記述しています。ただ、ところどころ三人称で書かれている部分があったりで、少し混乱します。
Bathurstは、ホームズのファンのようです。作中で探偵について言及しているところで「ホームズが素晴らしい」とコメントしていますし、Billに対して、“Elementary, isn’t it ?” なんて言っています。
まあ、これはTVドラマ「エレメンタリー」の題名由来で知ったフレーズなんですけどね。
こんな話
Sir Charles ConsidineのManor houseでは、年一回のクリケット週間となっており、その関係者が集まっていた。
そんなある朝、Billiard RoomでPrescottという男の死体が発見される。背中に短剣が刺さっていたので刺殺と思われたが、検死の結果、実は絞殺されたことが判明する。
Prescottは夜中に殺害されたのだが、正装していたところから、誰かに呼び出されたのではないかと推測された。
また、Prescottはなぜか金目の物を一切身につけてもいなかったし、部屋の中にも何一つ残していなかった。
キャッシュレス派なのか?、Mr.Prescott (笑)。
そんなわけないですね、なにせ1927年の作品ですから。
Bathurstは、Sir Charlesに働きかけて、Inspector Baddeley率いる捜査陣に加わることに成功する。ここから関係者の取り調べが始まる。Prescottはカードで負けたのでは、という話も出たが、200ポンドの借用書を書いたという証言も出てきて、いよいよ消え失せた金品が焦点となる。
そんな中で新たな事件が発生。Lady Considineのパールのネックレスが盗まれたのである。犯人は金目当ての強盗なのだろうか。
さて、BathurstはPrescottの死体発見者であるメイドを尋問し、発見時の不可思議な行動を追求する。
この女、ただものではないぞ...
ここまでで、およそ1/3。その後、宝石泥棒の正体が明らかになると、焦点は殺人事件に絞られていく。
中盤の展開は悪くない
尋問が始まったときには、そのままダラダラと進むのかと危惧しましたが、話の展開には活気があり、読者を退屈させません。途中、Inquestを挟んで話を整理しながら緊張感を持って進める手腕は大したものです。
結末は..
ラスト20ページで、話は変な方向に進んでいきます。あれれ、と思っていたら...
何を言っているかよくわからないでしょうが、ここまで。
やってくれたな
少し苦しい結末だけど、楽しく読めました。第二作も買ってみよう。