The Cornish Coast Murder ( John Bude )
イングランドの田舎町を舞台に雰囲気のある展開で読ませるが、この犯人設定はちょっとひどいな。
John Bude は WikiPedia によると、本名を Ernest Carpenter Elmore (1901–1957)といい、演劇関係に従事した後作家専業となり、Bude 名義で30冊のミステリを出版したとのことです。最近 「British Library Crime Clasics」 の中で復刊されているので、まずは処女作である「The Cornish Coast Murder(1935)」を読んでみます。
こんな話
舞台となるのは、Cornish Coast の静かな村 Boscawen。
嵐の夜、地元の牧師である Dodd は自宅で友人の Dr Pendrill と歓談していたのだが、そのさなかに医師を呼び出す電話がかかってくる。それは、近くに住む Julian Tregarthan 判事が自宅で頭を撃ち抜かれて射殺されているというものであった。現場に赴いた彼らは、三発の銃弾が発射され、そのうちの一発が致命傷であったことを確認する。
Julian Tregarthan 判事は、姪の Ruth および、使用人である Cowper 夫妻と同居していたが、意地の悪さと秘密主義で知られており評判の良い男ではない。Ruth は最近、近くに下宿している作家 Ronald Hardy と親密になっているのだが、それに反対する Julian とは再三に渡って口論をしていた。また、犯行時間前に、Julian が Hardy の元に訪れ言い争いをしていたことも明らかになる。しかも、Hardy は犯行時間直後に車に乗って村を出ていくところを目撃されているのだが、その後の行方は不明となっている。このような状況から、嫌疑は自ずと彼ら二人にかかってゆく。
現場に派遣された Inspector Bigswell は、スコットランドヤードが出向く前になんとか解決したいと切望しており、Ruth、Hardy いずれかによる犯行、または共犯...と様々な可能性を検討するのだが、そのたびに反証が上がってきてしまい、結論には至らないのだった。
一方、Dodd 牧師は独自の推理を進めており、古い手紙を発見する。そこにはイニシャル 「M.L」 という人物が、被害者と関係があったようなのだ。しかし、そんな名前の人物は関係者の中に見当たらないのだが..。
読み終えると..
物語そのものはスムーズに展開していくので、楽しく読めます。文章も簡潔なので英語力の乏しい人間にとってはありがたい作品です。最後にハッピーエンドで終わるのも悪くありません。
しかし、この犯人設定は何なのだろう。あまり詳しいことを言えませんが、もう少し工夫してほしかった。特に犯行の動機について、何の伏線も張っていないというのは、どうしようもない欠陥でしょう。ミステリとして評価できないのを残念に思います。