The Creeping Jenny Mystery ( Brian Flynn )

色々趣向を凝らしているのだが、中盤の退屈さは如何ともしがたい。


 久しぶりにBrian Flynnを読んでみます。「The Five Red Fingers」 「Invisible Death」 と2作続けて出来が今ひとつ、いささか失望させられましたが、今回の「 The Creeping Jenny Mystery (1930) 」はいかがなものでしょうか。


こんな話

 表題になっている The Creeping Jenny というのは、このところ世の中を騒がしている怪盗。大邸宅に忍び込み宝石を奪った後、名刺代わりの文書を残していくというなかなか洒落た宝石泥棒。

 今回その怪盗の対象になったのは、Mordaunt家。当主 Henry Mordaunt は、娘の婚約を祝うパーティーを主催することになっていた。その場で婚約者の Captain Lorrimer は、Molly Mordaunt に家宝である Lorrimer Sapphire という逸品を贈り物として渡すなどいう。
ところが、その夜、当主の後妻である Olive Mordaunt が短剣で刺殺され、近くの井戸に放置される惨劇が起きる。同時にあのサファイアも消え失せてしまったのだ。

 事件を担当するのは、Baddeley 警部。作中の記述によると、この警部、Flynnの第一作である「The Billiard Room Mystery」にも出ているそうですが、全く記憶にございません。
Flynnのレギュラー探偵といえば、Anthony Bathurst ですが、今回彼は裏で色々動いているようですが、あまり表面に現れません。それに代わって、物語の狂言回しとなっているのが、友人の Peter Daventry。話は Baddeley の捜査と、Bathurst に助言を受けている Daventry を中心に進んでいきます。

また、Russell Streatfeild という謎の弁護士が、Henry Mordaunt の意を受けて事件調査に動いているらしい。彼は他の誰とも面識がないらしいが、一体何者なのであろうか。

 一連の捜査を終了した Baddeley は、サファイア盗難事件の犯人として、とある人物を逮捕するのだが..。


読み終わると...

 殺人事件と盗難事件が起きるところまで快調に進みます。さて、ここからどう展開するのかと期待したのですが、一気に停滞。中盤からは、Baddeley のつまらない捜査と、間の抜けた Daventry の言動につきあわされ、いささかうんざりさせられます。このあたりは、英国作家にはよくあるような気がしますが、P.G.ウッドハウスを意識しているのかもしれません。残念ながら、わたしは苦手。ウッドハウスは日本語でも退屈で読み通せません。
 ミステリとしてみると、犯人は特に意外でもない平凡なものでしたが、動機設定は結構面白い。それ以上に楽しかったのが、謎の弁護士の正体。これには笑いました。

 このところの不調を払拭する出来ではありませんでしたが、次作の「Murder en Route」は、Flynnの代表作の一つと言われているので、もう少し付き合ってみます。