The Lady is Dead ( Patrick Laing )
筋書きが単純なので、作者の狙いはすぐわかってしまいました。
Patrick Laing の「The Lady is Dead(1950)」を読んでみます。Laing は、Amelia Reynolds Long の別名で、この名義の作品では、「If I Should Murder(1945)」が「もしも誰かを殺すなら」という題名で翻訳されているようです。
Long については、こちらのサイトに略歴と作品リストが紹介されています。
こんな話
主人公は、盲人でありながら大学の心理学教授である Patrick Laing。彼の一人称で話は進んでいきます。
Laing の大学の集まりで Prentiss という教授が、Helena Stedman という美人女優について思い出話を始める。多くの男性を魅了した彼女は、絶頂時に結婚し引退、子供を設けるが離婚、その後不遇の死を迎えたのだと言う。20年前の話だったが、この事件がその後の展開に影を落とすことになる。
大学における演劇の分野では、一つの問題が表面化していた。ここで演劇を教えている Antonio Barto は、Mark Fordyce という青年の才能を高く評価し、次の舞台で主役を任せることにしていた。しかし、Mark の父でありこの大学に勤務する科学者である Eric Fordyce は、息子が演劇に関わることに強く反対していた。最近では父子間での言い争いが周囲に知られるまでになっていたのである。それでも、Mark は舞台稽古に挑んでいたが、その場に乗り込んだ Eric は強制的に息子を連れ出してしまう。
一方で Mark は、女優上がりの女性 Nora Hilton との関係が噂されるようにもなっていた。この年上の女性と再三同席しているところを目撃されていたのである。
そんなある日、Eric Fordyce の研究室から火が出て、焼死体が発見される。当初は煙に巻かれての死亡とされたが、首の周りに扼殺のあとが発見され、殺人事件であることが判明する。
この事件の少し前に、Mark は荷物をまとめて姿をくらましており、第一容疑者と見なされてしまう。また、指導教授であった Antonio Barto と、Nora までもが姿を消していたのである..。
その後、Mark は自宅に戻るのだが、彼は Nora と車で外出、車内で結婚を迫られ、それを拒むと車から降ろされてしまい、翌日徒歩と鉄道でなんとか戻ってきたと言う。もしそれが事実なら、アリバイは成立である。
警察は行方不明であった Nora と Barto を捜査していたが、突然 Laing の自宅に Nora 自身が訪ねてくる。彼女は真相を話すというのだが、なんと彼の目の前で射殺されてしまう。しかし、盲人である彼にはその正体がわからないのであった..。
読み終えると..
ミステリを読み慣れた読者なら、中途でプロットはわかってしまうでしょう。この作者なら、たぶんこんな手を使うだろうな、と容易に想像できてしまいます。話そのものは、テンポ良く進み面白く読めるので、もう少しひねりがあっても良かったな、というのが感想です。
それでも、この作家、今まで読んだ作品はどれも水準以上の出来ですし、英語も簡単なので、電子本で安く出してくれないかなあ。
Phonix Press 1950年 220ページ $2.00