The Link、Murder in the Maze ( Philip Macdonald、J.J.Connington )

残念ながら低調だった二作。マクドナルドがこんなにつまらないとは..。



The Link(1930) Philip Macdonald


 Philip MacDonald (1900-1980) は、日本でも数作翻訳があるので、ミステリファンなら名前を知っている方が多いでしょう。この作家については、20年以上前になりますが、下記の作品を読んでいました。

Title Publisher Point Comment Date
Murder Gone Mad(1931) Avon Books 6.5 後半の展開が緊張感に乏しい。郵便ポストでの待ち伏せがすべてでは情けない。 1999/05/07
The Rynox Murder(1930) Avon Books 7.0 良くできた構成。後味も悪くない。映像的な展開に作者のキャリアを感じる。 1999/11/16
Persons Unknown(1932) Crime Club 6.5 尋問形式の展開は楽しいが、結末は少しガックリか。 2000/05/13

 取り立てて高い評価ではありませんが、どの作品も構成に工夫をこらしており、リーダビリティも高く、読んでいて退屈したことなどはありません。この人は映画の脚本なども手掛けているので、ストーリー展開にかなり優れた作家と評価していました。

 さて、今回読んでみた「The Link」ですが、Barzun & Tayler の書評集「A CATALOGUE OF CRIME」では、「Undoubtedly the best Gethryn story」としているので、少し期待して読み始めたのですが、これがとんでもなく退屈な作品でうんざりしました。我ながらよく最後までたどり着いたと思います。
上記の書評では、「Useless talk and commings and goings are at a minimum」なんてあるのですが、少しは展開がないと物語として成り立たないでしょう。まあ、「A CATALOGUE OF CRIME」では、John Rhode を数十作コメントしていることを考えると、このあたりの耐性が人並み外れているのかもしれません。


THE CRIME CLUB, INC 1930年 307ページ


Murder in the Maze(1927) J.J.Connington


 J.J.Connington (1880-1947)は、イギリスの作家。Sir Clinton Driffield を主人公とするミステリを20冊近く書いているようです。この作家は初めて読む作家だと思っていたのですが、よく調べると下記の作品を読んでいました。

Title Publisher Point Comment Date
The Case with Nine Solutions(1928) Penguin Books 5.0 退屈な作品。これが代表作ならもう読まなくてもいいや。 2001/09/07

うーん、あまり気が進みませんが、気を取り直して、Sir Clinton Driffield 登場第一作「Murder in the Maze」を読んでみました。

 事件は庭園の迷路の中で。双子の兄弟が殺害されたことに始まります。殺人手段は、クラーレ毒を塗った矢をエアガンで発射するというもの。それを皮切りに、一家に連続して魔手が迫ります。
前半の展開、特に迷路に入り込んだカップルがその殺人現場に直面して、逃げ惑うシーンなどよくできています。ただ、ここからが平板。続けざまに起きる事件をただ追っていくというだけで、あまり面白みがありません。

 読んでいる最中、「犯人が “XX” で、動機が “XX” だったら、だめだな。」と思っていたらそのとおりで、評価を落としてしまう結果となりました。


作品の入手について.

 J.J.Connington の作品は著作権が切れているようなので、Project Gutenberg から無料でダウンロードすることができます。