The Night of Fear ( Moray Dalton )
中盤からの法廷シーンで盛り上がり、ラストでさらにひとヒネリ。なかなかやってくれます。
先に、 「One by One They Disappeared」を紹介したMoray Dalton。今回は、2作目の「The Night of Fear(1931)」を読んでみます。
こんな話
”Dead! Don’t touch him, anybody, for God’s sake! I—I’ll ring up the police—”
冒頭一行目がこれ。死体発見シーンからの始まりです。「つかみはOK」という感じでしょうか。
事件現場となったのは、Laverne Peverilと呼ばれる邸宅。ここでは、主人であるTunbridge夫妻がクリスマスパーティを計画しており、いとこであるSir Eustace Tunbridgeと、彼の若い婚約者であるDiana Storeyが、祖母であるEmily Storeyを伴い滞在していた。また、当夜のパーティには夫妻の友人、関係者らが広く招かれていたのである。
その当日、パーティの余興として「かくれんぼ」が行われることになっており、一斉にライトが消された後、ゲストは暗闇の中、様々な場所へ散らばっていたのだった。
突然、その中から「灯りをつけろ」という大きな声が辺りを揺るがす。明るくなったギャラリーの中で、招待客の一人であるHugh Darrowが血まみれの手を掲げていた。彼が示す先に倒れていたのは、Edgar Stallardという実話作家であった。
通報を受けたのは、地元警察のSergent Lane。その場には、休暇で彼のもとに滞在していたスコットランドヤードの警部であるHugh Collierも居合わせ、Laneとともに現場に赴くこととなった。
Stallardの死因は刺殺。凶器が現場に見つからないことから、他殺であることは間違いないようだ。Darrowは先の戦争で盲目になっていたのだが、自分が隠れていた窓枠の隣に異常を感じ、被害者を発見したのだと言う。
捜査を進めるLaneは、その夜一人でLaverne Peverilに宿泊することにしたのだが、なんとガス中毒で病院送りになってしまう。何とか一酸化中毒から回復したLaneだったが、その矢先に容態が急変、死亡してしまったのである。
捜査を一旦引き継いだHugh Collierだったが、その後すぐに捜査権は地元警察の警部Purleyに移管されることになり、彼はその場からの退場を余儀なくされる。
その後の捜査で、発見者であるDarrrowについて不利な点が明らかになっていく。彼の妹は、被害者に捨てられ自殺していることがわかり、Darrowが激怒していたことが判明する。また、長年盲人であった彼だったが、なんと視力を回復していたのである。だが、それを隠していたことから、さらなる疑いを持たれてしまい、ついには逮捕されてしまう。
Darrowに好意を持つゲストの一人Ruth Clareは、Collierのアドバイスを受けて、私立探偵であるHermann Glideに捜査を依頼したのであった。
Glideは捜査を進め、Laneがガス中毒の夜に作成していた資料が部屋からなくなっていうることや、被害者である作家のStallardは過去の事件を探って自著にしているのだが、それを恐喝目的にも使っていたフシがあることなどを発見する。とすると、彼を沈黙させることが犯行動機なのかもしれない..。
さて、後半の1/3あたりから法廷シーンが始まります。そして、最後に犯人が明らかになるのですが..。
読み終えると..
中盤からのストーリーはよく出来ていて、一気に読み通してしまいました。古いミステリによく見られる尋問の連続という展開を避け、法廷シーンを盛り込むなど、読者を退屈させない工夫に感心します。
ただ、ラストで犯人が明らかになるプロセスがいささか急すぎて、ちょっと呆気に取られてしまいました。法廷内で犯人が指摘されるようなケレン味を出せとは言いませんが、もう少し工夫があって然るべき、という気がします。
犯行説明の中で「これは無理だろう」という点があり、気になっていたのですが、何と最後にひとヒネリ、ピタリとあてはまってしまいました。こういう意外性は嬉しいもので、評価も少し高くなりますね。