The Paddington Mystery ( John Rhode )

後半少しミステリらしくなってきたが、そこまでが退屈そのもの。もう少しうまく書けないものか。


 John Rhode (1984-1964) は、Miles Burton 名義の作品を合わせて、なんと140冊以上ものミステリーを書き残した作家。史上、最も多くの本格ミステリを書いた作家と言われますが、その作品の大半を「退屈」の一言で片付けられることも少なくありません。一方で、その真面目な作風を評価する向きもあり、わたしが原書を読んでいた2000年前後には、古書価も高騰、気軽に手が出せなかった記憶があります。その中で、数冊入手して読んだ感想は以下のとおり。

Author Title Publisher Point Comment Date
John Rhode Death in Harley Street Perrenial Books 6.0 こんな薬品知識が読者にあると思っているのか。Rhodeはこれで当面見合わす。 1999/05/27
The Davidson Case Geoffrey Bles 6.5 トリックはすぐわかる。謎は面白いが、尻切れとんぼが作者の特徴だろうか。 2000/12/27
The Claverton Affair Perennial Mystery Series 7.0 Rhodeらしいまじめな展開。もう少し意外性があればよいが、望むのは無理か。 2001/08/11
Death On the Boat Train Collins Crime Club 4.0 前半はそれなりだが、中盤からひどい出来である。 2003/09/19
Miles Burton The Secret of High Eldersham Mystery League 1.0 退屈。途中でやめたかったが、流し読んだ。時間の無駄。 2001/11/05
Death in the Tunnel eBook 4.0 退屈の極み。この作家はもういいか。 2016/07/22

 ご覧のとおり、高い評価ではありません。個人的にあまりひどい感想は書かないようにしているのですが、Burtonの作品など、よほど腹に据えかねたようです。わずか6冊しか読まずに、140冊書いた作家をどうこう言うのは、不遜の極みと言われても仕方がないですが、まあこれまでの巡り合わせは良くなかったようです。

 さて、その Rhode ですが、最近 Amazon Kindle 本でかなりの作品が手頃な価格で復刊されています。
というわけで、今回は、Rhode 名義のレギュラー探偵である Professor Lancelot Priestley とその助手である Harold Merefield 初登場の作品「The Paddington Mystery(1925)」を読んでみます。ちなみにこの作品ですが、現在(2024年12月) Amazonで103円 というとんでもない価格で販売されています。この円安の時代にありがたい話であります。


こんな話

 ある夜、Harold Merefield が、クラブから帰宅したところから話は始まります。

 酔いに任せて寝室に入った Harold は、自分のベッド上でとんでもないものを発見する。なんと、そこには見知らぬ男の死体が横たわっていたのである。慌てて警察に通報した Harold だったが、嫌疑は自ずと彼の上に降りかかることとなってしまう。検死の結果、男は自然死とわかり彼の容疑は晴れることになるのだが、なぜ見知らぬ男が彼のアパートに侵入し、死亡してしまったのか、そこには、何か隠された謎があるはずである。状況が納得できない Harold は、父の友人であった Professor Priestley に相談を持ちかけるのだった..。

 この作品、事件はこれだけで、ここから話が一向に進みません。


読み終えると..

 とにかく中盤が退屈至極。短い長編なのに、なかなか先に進めません。よほどやめようかと思いましたが、原書を放り出すと「なにか負けたような気がする小心者(笑)」なので、とにかく読み通しました。
 後半になって、急に事件が動き出し、ちょっとしたトリックが明かされるのですが、そこで解明される謎は必然性に乏しく、なぜ犯人はこんなことをしなければいけないのか説得力がありません。先にも述べたように、この作品は Priestley 初登場作なのですが、出版社はよく続けて書かせたものです。

 フランスの詩人ヴォルテールは、「労働(ロードー)はわれわれを退屈、悪徳、欲望という3つの悪行から救ってくれる。」と言ってますが、ロードは、退屈から救ってはくれませんでしたね。