The Seventh Guest ( Gaston Boca )

クラシックな展開を予想していたら、怪談風から因縁話へと不思議な感覚で進んでいく物語。面白く読めました。


John Pugmiyerの序文によれば、Gaston Bocaは、フランス最高の学校École Centrale(知らんけど)を卒業した優秀なエンジニアだったようですが、多忙の中、彼はミステリ作品4作を1930年代に発表しました。
著名なフランス人密室物エキスパートであるRoland Lacourbe(知らんけど)によれば、「Bocaは、この分野で輝かしい成果を上げたパイオニアの一人」だそうです。

Bocaの作品で探偵役を務めるのは、Stéphane Trielという人物で、彼は自分自身を「ささいな悲劇の収集家」と呼んでいる模様。人の不幸を集めるのが趣味なのか。

やな性格だなあ(笑)。

あまり付き合いたくないような人物ですが、友人で同居人でもあるLuc Duthielが、ワトソン役を務めてます。ご苦労様です。
The Seventh Guest(1935)は、彼が探偵役を務める3作のうち、最終作であるとのことです。


第一部はこんな展開

首吊り死体を発見する。

ある日、TrielとDuthielは、d’Arlon夫妻から、Nanteuil Manorへの招待状を受け取る。
早速、出向いた二人は屋敷の前で案内を乞うが、誰も姿を現さない。当惑していると、その時遠くから女性の悲鳴が聞こえてくる。その声につられて進んでいくと、小さな小屋に行き着いた。まず目についたのは、泥濘んだ道に残る深く大きな足跡であった。それを避けるように室内に入ると、そこでは大柄の男が首を吊っていたのだった。

Trielは発見現場で、当主のRené d’Arlonと遭遇。彼によると、この男は門番Fougerasの甥で、Benoît Gérapinという人物であると判明。彼は前日から行方不明になっており、その捜索にあたっていたという。
Benoîtは首を吊って亡くなっていることから、自殺のように見える。しかし、Benoîtはその前から遊び呆けていた姿が目撃されており、そんな輩が自殺するとは疑わしい。

死体を調べたTrielは、Benoîtの唇に赤い口紅が残されていることを発見する。
警察からは、Inspector Troubertが到着。この男、なかなかの切れ者で、Trielにいろいろ挑発的な言動を仕掛けてきたりします。

この邸宅がすごい。

さて、この事件にナーバスになったd’Arlon夫人は、首吊りと同じ屋根の下に入られないとして、ここから出て行くと言いだす。すでに使用人を邸宅から帰してしまったとも言う。夫のRenéは致し方なく、いったんManorを後にすることを決断。運転手Émileを呼び、全員でメインゲートに向かうことになった。
ところが、メインゲートに着いてみると、なんと入出門の鍵が壊されており、邸宅から出られないという事実が判明する。門番のFougerasによれば、30分ほど前に使用人を通しているので、この間に何かが起こったらしい。

実は、このManorは特殊な構造なのである。邸は巨大な公園の中に存在するのだが、その外側は巨大で乗り越えられない壁に囲まれており、出入りは3ヶ所のゲートでしかできないという。屋敷は、まるで牢獄のようになっているのだ。6名は早速、他のゲートも調べてみるが、どれも同じ状態になっていたのであった。

まあ、外部にいるFougerasと話ができているので、「明日の朝には鍛冶屋を呼ぶだろう」と、あまり悲壮感はありません。


怪談ぽくなるぞ、第二部は..

邸宅に閉じ込められたのは、6名。
René d’Arlon、 Jeanne d’Arlon夫妻、運転手のÉmile、残りは捜査関係者のInspector Troubert、Stéphane TrielとLuc Duthielである。

果たして7人目の客は、存在するのだろうか。

この状況を引き起こしたのは、6人以外の人間なのではないか。その気配を感じた彼らは、この手の作品ではお馴染みの邸内探索を開始する。ここでTroubertは、偉大なる発見をする。多量の酒を見つけたのである。こいつで一杯やろうという趣向ですね。
一方、Duthielは、Troubertから預かっていた拳銃を盗まれるという大チョンボ。

お前に飲ませる酒はないぞ(笑)。

さて、杯を傾けようとした途端、

突然、外からドアを3回ノックする音が響く...

しかし、扉の向こうには誰もいない。ノックの主は、果たしてどこに消え失せたのだろうか。

ここから展開は一気に怪談風になり、様々な異常現象が彼らのまわりに起こり始める。6名はバリケードを作り閉じこもるが、急にシャンデリアが消え、キャンドルだけが頼りの世界に取り残されてしまう。何か投げ込まれたような気配に、Trielは隠し持っていた拳銃を発射する。そこには血痕が点々と残っていた...

一方、徹夜状態で朝を待つ中、d’Arlon夫人はDuthielに、「すべてが私のせい。ここから出ていくつもり」と告白する。
翌日になって、門番が扉を開けて入場。更に警察関係者も到着し、日常を取り戻します。

ここまでで、約2/3経過。さて、どういう結末をつけるのでしょうか?


終盤の展開は..

ちょっと意外な展開があって、これがなかなか面白い。「なるほど、これが元凶だったのか」と振り返ってみると、ここまでのストーリーが肯けます。

不可能トリックはどうだ..

足跡トリックはよくあるやつ。確かディクスン・カーはある作品で、これに一ひねり加えていたなあ。第二部の怪談にも、一応合理的な説明がなされますが、これはちょっとどうでしょうか。そもそもこの期に及んで、やる必然性があるとは思えません。

全体として、面白く読めました。

ラストも余韻を残します。終盤、少々大時代的になってきた(そもそも1935年の作品だけど)のは、作者の作品に対する思い入れの強さ、情熱と考えましょう。