The Thirteenth Bullet ( Marcel Lanteaume )
12の連続殺人と密室殺人。派手なわりにすっきりしない変なお話。
このところ全く原書を読んでいなかったので、リハビリを兼ねて比較的短い作品を選んでみましたが、これがまた変な話。読み通すのに苦労しました。
取り上げたのは、Marcel Lanteaume(マルセル・ランテーム)という作家の「The Thirteenth Bullet(1948)」という作品。忘れられたフランス作家紹介でおなじみ、John Pugmire主催Locked Room Internationalの一冊です。
Marcel Lanteaume(マルセル・ランテーム)(1902-1988)とは?
全く知らない作家ですが、まえがきで紹介がありましたので、少し引用しておきます。
1940年代の探偵小説界において、流れ星のような作家が存在しており、その一人が英語圏のHake Talbot(ヘイク・タルボット)であり、もう一人がフランス圏のMarcel Lanteaume(マルセル・ランテーム)とのこと。その共通点は下記の通り。
One Marcel F. Lanteaume who, at the end of World War II, published three exceptional works: Orage sur la Grande Semaine (Storm Over Festival Week), Trompe-l’œil, and La Treizième Balle (The Thirteenth Bullet), before he, too, disappeared.
Marcel LanteaumeもHake Talbotも、2-3冊の本を残して消えてしまった作家というわけです。
彼の経歴は25年間謎だったそうですが、その後判明したところによると、上記の小説はドイツの捕虜収容所での退屈しのぎに書かれたということです。
“I wrote the three detective stories because I was so bored in captivity,” he declared. “During my work as an unskilled labourer in a foundry, and to fill the intellectual void that it entailed, I had plenty of time to refine my fantasies, and on Sundays, amidst the hubbub of a hundred and fifty captives, I wrote it all down.”
小説が書けるほどだから、ドイツ軍もフランス人捕虜の扱いは丁重だったわけね。
さて、「The Thirteenth Bullet」は...
フランスで無作為と思われる連続殺人が頻発しているところから話は始まります。
被害者は全員銃で胸を打ち抜かれており、その銃が同じものであることから同一犯であることは間違いない。犯行現場では灰色のコートを着た若い男が目撃されていた。無差別殺人のように思われるが、被害者が犯行直前に灰色コートの男と話をしていることを目撃されていることもあって、何らかの関連性があることも伺われた。
とあることから、捜査陣は灰色コートの男の共犯者と思われる男、ロシア人のGregorを捕縛することに成功する。彼は大男にもかかわらず臆病で、極端に怯えてしまっている。そのため彼を保護するために、銀行の堅牢なコンクリートづくりの部屋の収容し、複数の護衛が外から監視する体制を取ることとなった。しかし、その翌朝、Gregorは心臓を撃ち抜かれ、殺されていたのである。
と書くと、すごく面白そうでしょうが..。実は、これがつまらない(笑)。
読み終えると...
一言で言うと、小説として完成度が低すぎる。これにつきます。
話を進める視点がコロコロ変わってしまい、誰が主人公なのかもよくわからず、落ち着かないことこのうえありません。そのうえ、ストーリー展開に一貫性がなく、途中で変な方向に話がずれていってしまい、うまく頭に入ってきません。要するに、読み続けるのが苦痛に感じるレベルなのです。
ラストは意外な犯人を設定したつもりでしょうが、まあ、「どうでもいいや」という感じ。
ひとりよがりな作家の変なお話を読まされてしまった
これが正直な感想です。