The Treason of the Ghosts ( Paul Doherty )

陰惨な事件が連続する派手な展開で読ませますが、ミステリとしては意外性もなく平凡なのが残念。


 毎回楽しませてくれる Paul DohertyHugh Corbett シリーズ、今回は第12作目に当たる「The Treason of the Ghosts(2000)」を読んでみます。さて今回はどうでしょうか。


こんな話

 舞台となるのは、Melfordという都市。ここは経済的に富裕な都市なのだが、城壁や門がないため、外部から侵入しやすいという治安上の問題を抱えていた。

 それが現実のものとなったのが、5年前のことであった。少女が次々と暴行されたうえ殺害、その死体が郊外に遺棄されるという陰惨な事件が連続して起こったのである。同時期に Walmer という未亡人の遺体も発見され、その犯人として Sir Roger Chapeleys という男が浮かび上がった。彼は女癖が悪い男として知られており、事件当時その未亡人宅に訪れていたことや、事件に関係したと思われる遺留品を残していたことから告発され、裁判にかけられることになったのである。

 彼の犯罪を指し示す証拠は曖昧であり、さらに犯行時間前に現場を立ち去る Roger Chapeleys を見たという証人も現れたのだが、その男は飲んだくれの密猟者であり、買収されたのだろうということで、その証言は無視されてしまう。Roger は最後まで無実を叫んだのだが、陪審員の中に Roger に敵意を持つものがいたこともあり彼の有罪は確定、絞首刑となってしまったのである。
 Roger の死によって、連続殺人はなりをひそめ、街は平和を取り戻したように思えた。ところが今年になってまた少女が殺されるという事件が連続して起きてしまう。また、同時に Roger の裁判の陪審員たちが次々に殺されているのである。

 王の命を受け現場に到着した Hugh Corbett は、Sir Roger Chapeleys は冤罪である可能性が強いと考える。陪審員が連続して殺害されているのは、不正な審判に対する復讐なのではあるまいか。また、少女連続殺人魔は、まだ Melford の森を徘徊しているようなのだ。彼はこの2つの連続殺人を収拾できるのだろうか..。


読み終わると...

 今回の作品は現代で言うところのシリアルキラー物。猟奇的な殺人が連続するという派手な展開で読ませます。
 ただ、Doherty の作品を読み続けて常に感じるのは、人物の書き分けがまずいこと。宗教関係者、学者、官僚など様々な人間が登場しますが、画一的で個性に乏しく印象に残りません。
また、ミステリ的な面白さに欠けており、読者の裏をかくような意外性やひねりの要素がほとんど見られず、要するにセンスに乏しいと言わざる得ません。今回の作品では、そういう欠点が目立ってしまった、そんな感じがします。
たとえば、2つの連続殺人が別の人物の犯行であることは中盤で明らかにされてしまい、あとはそれぞれの犯人を設定するだけという展開は、ミステリとしては一貫性にかけています。また、人物像がぼやけているので、終盤に犯人を指摘されてもあまり説得力がありません。
それでも中世を舞台にした暗いムードの中で、殺人が連続するストーリー展開は魅力的で面白く読めます。ようするにあまりうるさいことを言わず、それを愉しめばよいのでしょう。