マウスコンピューター「WN891」で遊ぼう ( その4 Linuxをインストールしてみる )
さて、ここまでWN891へのWindows10クリーンインストールと、ちょっとしたチューニングをしてきたわけですが、『「WN891」で遊ぼう』という内容ではなかったですね。ここからは、すこし方向を変えて、Linuxをインストールして遊びましょう。前回、クリーンインストールで元に戻ることを確認していますので、気楽に作業が出来ます。
まずは、Xubuntu 20.04を最初のターゲットにします。本家のUbuntuは、ウィンドウマネージャが”Gnome”なので、Windows10と変わらないメモリを消費することは明らかですから、ここは軽量な”Xfce4”を使用しているXubuntuにしましょう。
ただ、Ubuntu 20.04系は、すべて64ビットで32ビット版はありません。WN891には、いささかオーバースペックのような気もしますが、とりあえずここから始めることにします。
1. 前準備
(1) インストールUSBの準備
まずは、このサイトから、Xubuntu 20.04のISOファイルをダウンロードします。終了後、ISOファイルからブート用のUSBを作成します。ツールはWindows上で、Rufusを使うのが一番でしょう。
(2) 32ビットEFIへの対応
2015年前後に発売されていたWindowsタブレットは、基本的に64bitアーキテクチャであるにもかかわらず、UEFIブートは32bitという変な仕様になっているとのこと。WN891もその例に漏れないようです。
その対応として、32ビット用のブートローダー”bootia32.efi”をインストールメディアに入れておく必要があります。このサイトからダウンロードしておきましょう。完了後、”bootia32.efi”を、USBメモリの”/EFI/BOOT”にコピーしておきます。
(3) BIOS設定
まずは、BIOSの設定を変更します。
“WN891"では、電源投入後、”Intelのロゴ”が出てくる辺りのタイミングで、”ESC”キーを押すと、設定画面に入れます。このキーボードの”ESC”は、下図のように、3つのキーを同時に押す必要がありますので、事前に確認しておいてください。
先に実行したWindows10のクリーンインストールと同じ作業ですが、ひとつだけ追加設定項目があります。
メニュー”Security”から、「Secure Boot Menu」まで降りてEnter、次画面の「Secure Boot」を、「Disabled」に設定します。
”Secure Boot”というのはEFIの機能で、事前に登録されていないコードはブートできないようにするものです。今回は、Linuxをブートするわけですから、この機能をDisableに設定しないといけません。
上位にESCキーでもどり、メニュー”BOOT”から、「Boot Option Priorities」まで降りていき、「Boot Option #1」に、先に作成したUSBメディアを設定します。ブランクキーを押すと、上にあがっていくようですなので、最初に持ってきてください。
終了後、メニューの"Save & Boot”を選択、”Yes"で、USBからのブートを開始します。
2. インストール
(1) 画面を回転させる
画面上に、”Xubuntu”のロゴが現れ、USBメモリからのロードが始まります。しばらくすると完了し、X-Windowの画面が表示されます。立ち上がるのは、ライブ画面というもので、簡単なテスト使用ができるようになっているだけで、実際にインストールされたわけではありません。
画面が、縦向きになっていますね。まずはこれをなんとかしましょう。
左下のメニューをクリック、ターミナルを起動させます
ターミナルが起動したら、下記のコマンドで画面を右に回転させます。
$ xrandr -o right
これで通常のPCと同じ状態になります。
それでは、画面左下のアイコンをクリックして、実際のインストール作業を開始しましょう。
(2) インストールの実行
ここからの作業は、通常のインストール設定ですので、このあたりの情報を参考にしてください。
上のサイトでは、「インストールの種類」で独自のパーティション設定をしていますが、今回は、「ディスクを削除してXubuntuをインストール」を選択してください。
インストール完了まで、約40分ほどかかります。その後、上記サイトを参考に、日本語設定を行ってください。
なお、起動毎に都度画面を右回転させるのは面倒なので、自動化しておきます。
メニュー -> 「設定」 -> 「ディスプレイ」から、”回転”を「右」に設定しておきます。これで、次回の再起動から自動的に横向きになるはずです。
以上で、日本語化を含めてインストール作業は完了です。
3. Xubuntuのリソース使用について
今回インストールしたXubuntu 20.04がどの程度マシンリソースを消費するかを、Windows10との対比から見てみましょう。
(1) 初期メモリ使用量
これは、スタートアップ直後の、何も動いていない状態のメモリ使用量です。
約490MG占有しています。Windows10のクリーンインストール時が1.2G、少しチューニングした後が1.0G程度ですから、半分以下の使用率であることがわかります。
(2) 初期CPU使用量
まずは、何も動いていない状態でのCPUとメモリの推移を見てみましょう。
下記は、Xubuntuのタスクマネージャのグラフです。基本的にCPU(左),メモリ(右)とも一定値で推移しており、定期的に動いている処理が若干CPUを使用していますが、極めて安定したレベルを維持しています。
一方、Windows10では、何も動かしていないにもかかわらず、CPUを極端に消費する処理が不定期に大きな波を作っています。
(3) プログラム動作時のCPU使用量
次にXubuntuで、ブラウザを立ち上げ、Yahooなどのサイトを2つ、同時にYoutubeで動画を再生してみました。
同様の処理を行うと、Windows10ではメモリ使用量が95%になってしまいましたが、Xubuntuでは60%程度で安定しています。CPU使用量は、当然かなり増加しますが、上に張り付いている状態ではなく、まだ若干の余裕があります。
以上の状況から判断すると、XubuntuはWindows10に比べ、リソース環境面では良好と言えるでしょう。
それでも、実際に使ってみて「動きが今ひとつ」と感じるのは、抜本的にプロセッサ自体の能力が低いからです。いくら環境を良くしても、実力以上のことはできません。それは、マシンも人間も同じですね。
(4) 初期ディスク使用量
ディスクは、日本語環境構築後で、7.6G。Windows10が、同様の状況で16G程度ですから、ここでも半分程度の消費量ということがわかります。
(5) 起動時間
電源を入れIntelのロゴがでてから、画面が出るまでの起動時間は、約31秒でした。
一般に、Linuxの起動時間はWindows10より遅いと思います。Ubuntuでは、起動プロセスがSystemdになってから、悪くなったような気がするのですが。
(6) その他
wifiは、インストールの段階でつながります。Bluetoothは、マウスを接続してみましたが、問題なく使えます。音声も問題なし。バッテリは、100%充電で3時間48分使用可能と表示され、スリープも効きます。当然でしょうが、カメラやセンサーは使えません。
(2021/09/21追記)
(7) タッチスクリーンの設定
WN891は、曲がりなりにもタッチパッドがありますから、それほどの必要性は感じないかもしれませんが、画面タッチが使えると何かと便利です。本来はタブレットマシンですしね。
残念ながら、Xubuntuインストール後に画面を回転しても、タッチスクリーンの座標はそのままになっています。これを対応させましょう。
まずは、タッチスクリーンの名称を確認します。下記のように入力します。
$ xinput
上記画面の、’Goodix Capacitive TouchScreen’がデバイス名なので、これを画面横向きに対応させます。
xinput set-prop 'pointer:Goodix Capacitive TouchScreen' 'Coordinate Transformation Matrix' 0 1 0 -1 0 1 0 0 1
これで、タッチスクリーンの座標が合ってくれます。上のコマンドを、「設定」→「セッションと起動」の「自動開始アプリケーション」に登録しておくと良いでしょう。
ちなみに、縦向きに戻す場合は、下記のように入力します、
xinput set-prop 'pointer:Goodix Capacitive TouchScreen' 'Coordinate Transformation Matrix' 1 0 0 0 1 0 0 0 1
Firefoxをタッチスクリーンに対応させる
Firefoxの起動コマンドに、環境変数’MOZ_USE_XINPUT2=1’を与えると、タッチスクリーンに対応してくれます。
sudo sed -i "s|Exec=|Exec=env MOZ_USE_XINPUT2=1 |g" /usr/share/applications/firefox.desktop
上記コマンドによる変更で、タッチによる画面スクロールや、ピンチイン/アウトでの画面の縮小、拡大ができるようになります。これは、結構便利ですよ。
最後に
Xubuntu 20.04、案外簡単に入ってしまいました。
WN891は専用キーボードが、Bluetoothではなく物理接続なのが良いですね。他のタブレットでは、USBにハブを付け、そこにキーボード、マウスを装着しないとインストールできませんが、WN891ではBIOS設定から専用キーボードが使えます。非常に作業が楽でした。
ここまで検証したように、Xubuntu20.04はWindows10のほぼ半分のリソースで動きます。Windows関係に未練がないなら、この環境に全面移行するのも良いかもしれません。770グラムのLinuxマシンが手に入ります。