密室大集合 ( エドワード・D・ホック編 )

バラエティに飛んだ密室アンソロジー。既読が多かったのは残念。


題名 作者 評点 コメント
山羊の影 ジョン・ディクスン・カー 5.5 ストーリ展開がゴタゴタしているうえ、トリックは実現性に乏しい。習作でしょう。
クロワ・ルース街の小さな家 ジョルジュ・シムノン 6.5 「13の秘密」に出てきたジョゼフ・ルボルニュ物。よくあるトリックである。
皇帝のキノコの秘密 ジェイムズ・ヤッフェ 7.0 ローマ帝国時代の毒殺事件と結びつける展開が面白い。ただ、ラストは今ひとつ決まらない。
この世の外から クレイトン・ロースン 7.5 「EQMM 1958年11月号」で読了済み
鏡もてみるごとく ヘレン・マクロイ 7.5 「EQMM 1961年5月号」で読了済み
七月の雪つぶて エラリー・クイーン 5.0 「EQMM 1957年7月号」で読了済み
ニュートンの卵 ピーター・ゴドフリー 5.0 思わせぶりな展開だけで、解決はつまらない。
三重の密室 リリアン・デ・ラ・トーレ 7.5 ジョンソン博士物。派手な三重密室とエキゾティックなムードが良い。犯人の正体も面白い。原文は難しそうだ。
真鍮色の密室 アイザック・アシモフ 6.0 「悪魔との契約」物。オチがアシモフらしい。
火星のダイヤモンド ポール・アンダースン 7.0 「EQMM 1958年10月号」で読了済み
子供たちが消えた日 ヒュウ・ペンティコースト 7.5 「年刊推理小説・ベスト10 (1960年版)(デイヴィド・C・クック編)」で読了済み
魔術のように ジュリアン・シモンズ 6.0 殺人後消え失せてしまった犯人。あまり説得力のない小品。
不可能窃盗 ジョン・F・スーター 7.0 コレクションを盗めるか賭けをした二人の男。面白い設定で読ませる。
ストラング先生と博物館見学 ウィリアム・ブルテン 6.0 窃盗容疑がかかった生徒を救うストラング先生の活躍が微笑ましい。
お人好しなんてごめんだ マイクル・コリンズ 5.0 密室の説明がよくわからない。
アローモンド監獄の謎 ビル・プロンジーニ 8.0 衆人監視の中、絞首台から消えてしまった死刑囚という不可能設定が抜群。時代を1910年代にとり、謎の探偵役登場という古典的な構成も決まっている。
箱の中の箱 ジャック・リッチー 5.0 オチがわかりません。
魔の背番号12 ジョン・L・ブリーン 6.0 呪われた背番号を背負う選手が球場から失踪後、死体で発見される。審判探偵による謎解きは平凡。
奇術師の妻 J・F・ピアス 6.0 奇術の舞台から消えてしまった女。こんな事件を起こす必然性にかけるな。
有蓋橋事件 E・D・ホック 6.0 つじつま合わせのトリックで新味はない。

 短編の名手エドワード・D・ホックが選んだ密室アンソロジー。副題に「アメリカ探偵作家クラブ傑作選(7)」とあるようにMWAの年刊として編集されたもの。文庫本で550ページを超える大部なので、読み切るには結構な時間がかかりましたし、本を持つ手も疲れました。

 今回は、クレイトン・ロースン「この世の外から」、ヘレン・マクロイ「鏡もてみるごとく」、ヒュウ・ペンティコースト「子供たちが消えた日」という中心となる作品が既読でしたので、いささか物足りなさを覚えましたが、その中でビル・プロンジーニ「アローモンド監獄の謎」が出色の出来。なんといっても執行後に絞首台から消えてしまった死刑囚という設定が素晴らしい。
これに次ぐのが、リリアン・デ・ラ・トーレ「三重の密室」。例によって、ボズウェルによる「サミュエル・ジョンソン伝」をベースとした短編ですが、魅力的な密室と犯人の正体が面白いものでした。

 原題は「ALL BUT IMPOSSIBLE!」(1981年発行)。翻訳で割愛された作品はなく完訳ですね。巻末には井上一夫のよる「作家紹介」があり、各作品の初出誌や作家の経歴なども付加されており、翻訳本のほうが資料価値が高いかもしれません。