探偵小説十戒 幻の探偵小説コレクション ( ロナルド・ノックス編 )

中盤の古臭い話の連続にはうんざり。ラストの三篇になんとか救われました。


題名 作者 評点 コメント
付けぼくろ J.D.ベレスフォード 5.0 一人二役の犯罪を逆手に取った話だが、動機や設定に古さを感じるのは致し方ない。
山の秘密 C.ボベット 5.0 山で転落死を遂げた夫は殺されたのだと妻は訴える。犯人は最初からわかっているし、追い詰め方も陳腐。
開いていた窓 K.R.G.ブラウン 6.5 非道な高利貸しの殺人現場を発見した警官と主人公。筋書は見当がつくが、軽妙な語り口が良い。
毒薬の瓶 バーナード・ケープス 6.0 爵位相続者の少年は、誤って毒を飲んだとされるが..展開は急だが、面白いトリック。
火曜ナイトクラブ アガサ・クリスティ 7.0 これだけの枚数で、しっかりしたミステリを書けるとは。さすが女王、モノが違う。
死の日記 マーティン・カンバーランド 4.0 名探偵が登場し密室殺人と一昔前のステロタイプ。トリックを含め、古臭い。
誰がカステルヴェトリを殺したか ギルバート・フランコウ 5.0 展開がわかりにくく冗漫。
夕刊最終版 ケルマン・フロスト 4.0 これまた古臭い話。うんざりしてきた。
ガーターの夜 アーサー・ホファム 4.0 これもよくわからない話。かんべんしてくれ。
<セブン>の合図 ジョン・ハンター 5.5 謎の人物との対決を描く活劇。悪くはないが、一昔前のメロドラマである。
犯罪の芸術家 デニス・マッケイル 6.0 何のひねりもない話だが、登場人物がうまく描かれているのが救いだ。
圧倒的な証拠 バロネス・オルツィ 8.0 いわゆる天一坊物だが、共犯関係がうまく考えられていて面白く読める。
ラングドン事件 グラディス・セント・ジョン=ロウ 7.5 部帽の樹有を巡る三角関係は劇上での殺人となるが..ラストはリドルストーリーの趣もあって読ませる。
動機 ロナルド・ノックス 7.5 いくつものアイディアを一つの短編に押し込んで、さらにオチをつけるというゴージャスな一篇。
  • 知らない作家揃いで、読むのに期待と不安を感じたアンソロジーでしたが、残念ながら後者となりました。帯には「推理小説史上に輝く名アンソロジー」とありますけどね。
  • 結局、クリスティ、オルツィ、ノックスといった大家以外の作品で、面白かったのは「ラングストン事件」のみ。
  • 1920年代の作品ばかりですから、目くじらを立てるのはこれくらいにしておきましょう。

晶文社 1989年1月31日初版 1989年4月10日二刷 431ページ 定価2580円