日本代表ミステリー選集03 殺しこそわが人生 ( 中島河太郎 権田萬治編 )

「日本代表ミステリー選集」に値するのは樹下、鷲尾、安吾だけかな。後は平凡。


題名 作者 評点 コメント
遺書のある風景 梶山季之 5.0 [別冊小説新潮 三十八年四月]中盤までの展開はそれなりに読ませるが、結末は平凡。
生きていた死者 遠藤周作 6.5 [宝石 四十二年九月]モダンな新人女流作家と左翼崩れの老作家の対比が印象に残る。
散歩する霊柩車 樹下太郎 8.0 [宝石 三十四年十二月]自殺した妻の不倫相手を霊柩車で尋ねるという発想が面白い。ラストの捻りも効いている。
心霊殺人事件 坂口安吾 7.0 [別冊小説新潮 二十九年十月]心霊会を催す動機が面白い。安吾のミステリは捕物帖を含めてレベルが高い。
幻想曲 木々高太郎 6.0 [宝石 二十七年十月]戦死した夫がまだ生きているようだと怯える夫人。復員を巡る話は都合が良すぎる。
老人と犬 西東登 6.0 [小説サンデー毎日 四十七年二月]老将軍の末路が哀れであった。ミステリとしての筋書きは平凡。
文珠の罠 鷲尾三郎 7.5 [宝石 三十年一月]これだけ大胆なトリックだと、少々無理があっても感心してしまう。再読だが面白く読めました。
ロープウェイの霊柩車 都筑道夫 6.0 [スキーヤー 四十九年八月]舞台設定はいかにもという感じだが、ストーリーは平凡。
弔鐘 石原慎太郎 5.0 [オール読物 三十八年六月]よくある展開でもはや古臭い。このての話は寿命が短い。
霧の向こうに 仁木悦子 6.5 [別冊小説新潮 四十七年四月]記憶消失物。設定はよくあるが、後味の良さで救われる。
  • 昭和40年前後の中間小説は、ほとんどが古臭くなっていて、現代では読むに耐えないレベルになっていることが多い。
  • 坂口安吾のミステリレベルは余技を超えており、昭和20年代ではモノがちがうように思う。もう少し長生きして、ポケミスやEQMMを読んでいたら、評論にしろ実作にしろどんな物を書いたのだろうか。

昭和五十年十月三十日初版発行 昭和五十四年十月二十日七版発行 441ページ 定価420円