日本代表ミステリー選集08 殺意を秘めた天使 ( 中島河太郎 権田萬治編 )

いまひとつぱっとしない一巻でした。


題名 作者 評点 コメント
葡萄草文様の刺繍 松本清張 6.5 [オール読物 四十二年二月]一枚のテーブルクロスから物語を作り出す作者の力量には関心する。
落し物あり 城山三郎 3.0 [発表年不明]こんな作品を選ぶ編者の鑑賞眼を疑う。
尾行者の証言 大谷羊太郎 5.0 [小説サンデー毎日 四十七年七月]恐喝者が陥るトリックは悪くないが、展開がつまらない。
蔵を開く 香住春吾 8.0 [宝石 二十九年九月]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜(I)で読了済。
発狂者 永瀬三吾 4.0 [宝石 三十年六月]現代の推理小説(第4巻) 社会派の展開で読了済。
七人の犯罪者 星新一 7.0 [発表年不明]犯罪者を7人捕まえることで免罪される男の計略は..オチは笑わせてくれる。
ネンゴ・ネンゴ 香山滋 6.5 [宝石 二十八年十一月]題名の島にまつわる話がなかなか良い。
地図にない沼 佐賀潜 6.5 [小説宝石 四十四年三月]財産相続争いのゴタゴタを描く。展開に見当はつくが悪くない出来。
指輪 有吉佐和子 5.0 [小説新潮 三十三年七月]楽屋落ちの部分は面白いが、何を書きたかったのかよく理解できない。
朱色 楠田匡介 5.5 [宝石 三十三年四月]話の設定と展開が慌ただしすぎて、ラストの意外性が生きていない。
奥さんこちら 山田風太郎 6.5 [別冊週刊大衆 三十六年八月]給与を持ち逃げしたと見られる妻の死体確認に再三引きずり回される夫。皮肉な結末は予想できる。
  • すでに読んでいた「蔵を開く」以外、面白い作品が皆無。とても「日本代表ミステリー選集」とは言えない内容でした。
  • このシリーズを読んでいて感じるのは、昭和40年代の作品にあまり面白いものがないこと。推理小説界の停滞を痛感します。単に、作品のセレクションが悪いせいかもしれませんけど。
  • 解説では、権田萬治が「社会派の系譜」と題し、清張以降のミステリ界動向をまとめています。

昭和五十一年一月十日初版発行 378ページ 定価380円