日本代表ミステリー選集09 犯罪特製メニュー ( 中島河太郎 権田萬治編 )

一定以上のレベルの作品揃い。楽しく読めました。


題名 作者 評点 コメント
妖婦の宿 高木彬光 8.5 [宝石 二十四年五月]「探偵小説年鑑(1950年版)(探偵作家クラブ編)」で読了済。
その情報は暗号 筒井康隆 6.5 [初出不明]二人の諜報員のやり取りが笑わせる。
江の島悲歌 斉藤栄 6.5 [小説サンデー毎日 四十六年十一月]この程度で共犯になるというのは今ひとつ説得力がない。
天狗 大坪砂男 6.0 [宝石 二十三年八月]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜(I)で読了済。
安房国住広正 大河内常平 7.5 [宝石 三十二年十二月]機械的なトリックはいささか興ざめだが、刀剣を巡る話は語り口の格調も高く読ませる。
クイーン牢獄 北壮夫 7.0 [オール読物 四十年九月]ジバコ物の一篇。オチは今ひとつだが楽しく読める。
かむなぎうた 日影常吉 7.5 [別冊宝石 二十四年十二月]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜(I)で読了済。
赤い毒の花 水上勉 5.0 [小説新潮 三十七年三月]ミステリー的には何の工夫もない話でがっかりさせられる。ここに載るべきではないだろう。
霧鐘 中薗英助 7.5 [別冊小説新潮 三十七年]北方領土を巡る当時の緊張感と人間模様がうまく描かれている。
八月は魑魅と戯れ 赤江瀑 7.5 [小説新潮 四十九年七月]人形をテーマにした作品は怖い。終盤が今ひとつだが、読者を引き込む魅力に富む。
急行出雲 鮎川哲也 6.0 [宝石 三十五年八月]このアリバイ・トリックは、鬼貫が出てこなくてもすぐ露見してしまうレベルでしょう。
  • これまでの「日本代表ミステリー選集」では、どうしようもないレベルの作品が散見されたのですが、この巻はハズレのない作品揃い。既読なのが残念ですが、「妖婦の宿」、「天狗」、「かむなぎうた」と世評の高い作品を中心に、昭和四十九年の赤江瀑までとバランスの良い選択になっています。
  • 解説では、中島河太郎が「<推理>ノート 怪奇幻想小説の系譜」と題した一文を寄せています。『推理小説のように一貫した流れが突きとめにくいが、脳裏に浮かんだ人たちに触れてみた。』としていますが、戦前の谷崎や新青年の作家から、SF畑の半村良まで幅広く紹介。さすがに手際が良いですね。

昭和五十一年三月十日初版発行 443ページ 定価380円