殺意の終着点 トラベル・ミステリー6 ( 鮎川哲也編 )

無名作家の書き下ろしが予想以上の出来で、ホッとしました。


題名 作者 評点 コメント
途上の犯人 浜尾四郎 6.5 [犯罪科学 昭和5年11月]列車内で子殺しを語る男。悪くないがラストにもうひとひねりほしいところ。
一等車の女 佐野洋 5.0 [週刊漫画 昭和36年4月]ちょっとしたコントのような
汚点 鮎川哲也 5.0 [推理ストーリー 昭和39年3月]死が二人を別つまで(鮎川哲也)で読了済。
大きな鳥のいる汽車 日影丈吉 7.0 [小説推理 昭和52年1月]エキゾチックな舞台設定と殺人の罠をかいくぐる主人公。悪くない出来。
急行列車 耕原俊介 7.0 [書き下ろし]急行列車内で殺人を打ち明ける男。ラストは今ひとつだが、文章がうまいので読ませる。
移動密室 山村直樹 5.0 [書き下ろし]旅行グループ内の連続殺人という設定はありふれているし、「移動密室」トリックがなんともつまらない。
阪和電車南田辺駅 長谷川卓也 6.5 [書き下ろし]若くして亡くなった叔母にまつわる事件がなかなか良く書けている。

鮎川哲也編集「トラベル・ミステリー」シリーズ最終巻。巻末の3作品は、初刊本「一等車の女」(徳間ノベルス 昭和53年6月)での書き下ろしのようです。
前巻で同人誌まで手を広げ、今回は書き下ろし作品。しかも、それが半分以上の紙幅を占めているというので、いささか心配しましたが、思ったより出来が良くホッとしました。特に耕原俊介「急行列車」は、しっかりした文章力に感心しました。この人のその後を聞きませんが、どうなったのなあ。