現代推理小説体系 第8巻 ( 短編名作集 )

お馴染み揃いの短編名作集。看板に偽りはありませんが..。


題名 作者 評点 コメント
黒潮殺人事件 蒼井雄 5.0 [新探偵小説 昭和二十二年七月]戦前の紀伊半島が舞台で、そのエキゾチズムは悪くないが、トリックは題名そのまま、なんの意外性もなく良い評価はできない。
犯罪の場 飛鳥高 5.0 [昭和二十ニ年一月 宝石]13の密室で読了済。
三人の双生児 海野十三 6.0 [昭和10年9-10月]新青年傑作選1 推理小説編で読了済。
刀匠 大河内常平 4.0 [宝石 昭和27年11月]地獄に落ちろ! 宝石傑作集2・サスペンス編で読了済。
三狂人 大阪圭吉 9.0 [昭和11年7月]新青年傑作選1 推理小説編で読了済。
蔵を開く 香住春吾 8.0 [宝石 昭和29年7月]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜で読了済。
失踪事件 加田伶太郎 7.0 [小説新潮 三十二年四月]日本代表ミステリー選集10 殺人者が追ってくるで読了済。
脱獄を了えて 楠田匡介 6.5 [宝石 昭和32年11月]現代の推理小説(第2巻) 本格派の系譜で読了済。
赤いペンキを買った女 葛山二郎 6.0 [昭和4年12月]新青年傑作選1 推理小説編で読了済。
ラ・クカラチャ 高城高 4.0 [宝石 昭和33年7月]天球を翔ける 宝石傑作集5・ハードボイルド・SF編で読了済。
闘争 小酒井不木 6.0 [昭和4年5月]新青年傑作選2 怪奇・幻想小説編で読了済。
ジャマイカ氏の実験 城昌幸 6.5 [昭和3年3月]新青年傑作選2 怪奇・幻想小説編で読了済。
波の音 城昌幸 6.0 [昭和30年4月宝石]現代の推理小説(第3巻) ロマン派の饗宴で読了済。
痴人の宴 千代有三 3.0 [昭和26年5月]宝石推理小説傑作選1で読了済。
監獄部屋 羽志主水 8.5 [大正15年3月]新青年傑作選3 恐怖・ユーモア小説編で読了済。
かむなぎうた 日影丈吉 7.5 [別冊宝石 昭和24年12月]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜で読了済。
ある決闘 水谷準 6.5 [改造 昭和26年4月]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜で読了済。
おーそれーみお 水谷準 6.0 [新青年 昭和二年四月]死んだ妻と昇天していく男。ファンタシーですね。
ある決闘 水谷準 6.5 [改造 昭和26年4月]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜で読了済。
八人目の男 宮野村子 8.0 [文芸読物 昭和二十四年二月]縁談の男が必ず不幸になってしまう妹を兄は勇気づけるが..。兄妹の手紙形式で語られる物語だが、旧家の暗い雰囲気がうまく書かれている。作者の筆力に感心。
獅子 山村正夫 8.5 [宝石 昭和32年11月]現代の推理小説(第2巻) 本格派の系譜で読了済。
文殊の罠 鷲尾三郎 7.5 [宝石 昭和30年1月]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜で読了済。
可哀想な姉 渡辺温 7.0 [昭和2年10月]新青年傑作選2 怪奇・幻想小説編で読了済。
偽眼のマドンナ 渡辺啓助 7.0 [昭和4年6月]新青年傑作選2 怪奇・幻想小説編で読了済。
  • 先に「現代作品集」を読み終えたので、この叢書内にあるもう一冊のアンソロジー「短編名作集」を手にとってみました。と言っても、編集は中島河太郎ですから、すでに読んだ作品ばかり。
  • 全21作中、未読になっているのは3篇のみ。しかも、このブログを始める以前に、蒼井雄「黒潮殺人事件」は「瀬戸内海の惨劇」(国書刊行会)で読んだ覚えがありますし、水谷準「おーそれーみお」もまちがいなく再読。結局、純粋な初読は宮野村子「八人目の男」のみとなってしまいました。
  • しかしながら、この「八人目の男」がなかなかの出来。兄妹間の手紙のやり取りを、改行をほとんどしない文章で進めていく手法はなかなかのもので、横溝正史の「車井戸はなぜ軋る」を想起させます。
  • 巻末のエッセイは、千代有三「楽しみとしての推理」。
    月報の犯人当て小説は、石沢英太郎「アリバイ不成立」。解答編第十六回は西村京太郎「第六太平丸の殺人」、権田萬治がエッセイ「夢の世界から日常的現実へ(上)」を書いています。
  • 今回は、アンソロジー消化試合でしたね(笑)。すみません。

講談社 昭和48年7月8日 第1刷発行 480ページ 850円