雪の断章 ( 佐々木丸美 )

前半から中盤の展開は良かったが、後半がくどすぎる。謎解きも平板だ。


佐々木丸美について

Kindle unlimited対象本をいろいろ探していたら、佐々木丸美の全作品が対象になっていることに驚きました。

佐々木丸美は、1970年代後半から1980年代に講談社から連続して作品を発表、一部に熱狂的な読者を獲得しました。
しかし、80年後半に筆を折り、作品自体も市場から消えていった、と言っていいでしょう。それとともに、著作自体がコレクターズアイテムとなって、なかなか入手が難しい時期があったようです。
事実かどうかはわかりませんが、作者自身が復刊を許可しなかった、といううわさ話も聞いたことがあります。
作者の死後、作品が創元推理文庫から再刊されたことは知っていましたが、今回、Kindle unlimitedの対象になっているのは、佐々木丸美コレクション 復刊ドットコムから出されたもののようです。

正直に言いましょう

佐々木丸美は苦手なのです。
かつて「崖の館」の評判が良いので、二回ほどチャレンジしましたが、その文体のくどさに辟易として投げ出してしまった経験があります。
個人的に女流作家が女性の一人称で語る話が、どうも苦手ですね。どうでも良いと思われるようなことへのこだわり、物や人に対する妙に細かい好き嫌い。それを長々と書かれると、辟易どころか吐き気さえ催します。
佐々木丸美は、まさしくそういう作家なので、あまり近づきたくはないのです。しかし、見つけたからには致し方ないでしょう。

今回、読むのは...

今回選んだのは、処女作「雪の断章」です。さすがに「崖の館」は勘弁してほしいので。この作品以降の「忘れな草」、「花嫁人形」、「風花の里」を合わせて孤児四部作というらしい。すごいシリーズ名ですな。

ストーリー

主人公の飛鳥は、本岡家に養女として迎えられますが、実態は女中のような扱いを受けています。必死になって働いても何も認められず、ついに家を飛び出してしまいます。そんな飛鳥を、前に面識のあった滝杷祐也という青年が保護し、手元に引き取って暮らすことになりました。その後は、彼の親友や家政婦らに見守られて、幸せな生活を得ることになるわけです。

まあ、ここまではよくあるような設定ですが、なかなか面白く読めます。

さて、高校に入ると本岡家との関わりが再度生じてしまいます。本岡家には聖子と奈津子の姉妹がいますが、妹の奈津子が飛鳥と同じ高校へ入学していました。また、姉の聖子が同じアパートへ引っ越してきます。
ここから話はミステリーぽくなって、その年の忘年会で聖子が毒殺されます。関係者は、当然警察に尋問を受けることになりますが、飛鳥は本岡家との関係から最有力容疑者として目されます。

感想

という形で展開していくわけですが、中盤からは正直くどくて胃がもたれてきます。
事件に関しては、時々刑事が嫌がらせのように出てくるだけで、なんの新展開もありません。
ある時、飛鳥は自ら犯人を推理します。だいたいこの手の小説では、これをひとひねりするものなのですが、なんの工夫もありません。
ミステリー的に見ると、なんら見るべきところがないと言わざるえません。
ラインハートならもう少し上手く書きますぞ。

まあ、最後まで読めたので良しとしましょう。
読後感は「変な酒を飲んだ翌日、大して二日酔いになっていないので、ホッとした気分」というところですか。