HMM 1966/4 No.119

ペンティコーストの中編を始め、久しぶりに読ませる作品揃い。こうでなくてはいけません。

題名 作者 評点 コメント
三人の逃亡者 アーヴィン・S・コッブ 6.0 三人の脱獄犯を待ち受ける皮肉な運命。平凡な出来。
レイ・ブラッドベリ 6.5 ちょっと不気味なショートショート。
山荘 フィリス・ベントレー 6.0 山荘に立ち寄った探偵作家は、アイディアを主人に聞かせるのだが..。ひねりのない展開が残念。
テニス・クラブでの殺人 アルベルト・モラヴィア 2.0 醜悪で品性を疑うような話。
謎のカード クリーヴランド・モフェット 8.0 有名なリドルスト-リイ。アイディアが良い。
賢兄愚弟 ソノラ・モロウ 7.0 1ページのショートショート。オチが笑わせる。
鳥の島 ジョン・バカン 7.0 島での孤独な一日の描写はなかなか迫力がある。クトゥルー神話ばりの展開も面白い。
明日は昨日 ヒュー・ペンティコースト 7.5 かつての業界大立者の刺殺事件。過去にまつわる動機は取ってつけた感があるが、一気に読ませる。
ベルリンの葬送(4) レン・デイトン
馬に乗った水夫 アーヴィング・ストーン
進化した猿たち 星新一
地獄の仏 石川喬司
紙上殺人現場 大井広介
現代アメリカの風物 中内正利
hmm5番館 大伴昌司
戦後推理小説裏面史(9) 大西順行
ノンフィクションガイド 青木雨彦
ミステリ名簿 大伴昌司 生島治郎氏
新着書紹介
アメリカーうらおもて(3) 小鷹信光
響きと怒り
ぼくはこれだけのものです 梅田秀俊
表紙 高羽賢一
目次・扉 真鍋博
カット 勝呂忠・真鍋博・杉村篤・新井苑子・金森達・池田拓・竹久不二彦
ページ 202ページ
定価 190円

今号の目玉は、ヒュー・ペンティコーストの中編。
「EQMM」傑作選を選ぼう。でも触れましたが、日本語版EQMMで最も登場回数が多かったのが、ヒュー・ペンティコースト。全29作が掲載されています。作品のレベルも高く、「正義とはなにか」「マンハッタンの殺人」「ゴムの楔」など印象に残る作品も少なくありません。まさしく、「EQMMの顔」と呼ぶにふさわしい作家と言えるでしょう。

今回の「明日は昨日」は上記3作品には及びませんが、やはり楽しい作品。死体発見者のシナリオライターの一人称で進む物語はなかなか読ませてくれます。
その他の作品(モラヴィアの作品を除く)も悪くありません。その中で注目すべきは、クリーヴランド・モフェットの「謎のカード」。有名なリドルストーリイなので、ご存知の方も少なくないかもしれません。読めないフランス語のカードを拾った男は、それを読ませるたびに宿泊を断られ、親友からも妻からも絶縁されてしまう。一体何が書かれていたのだろう、という話。

HMM4号め、ようやく盛り返してきたのでしょうか。今後もこのレベルを維持してほしいものです。