HMM 1967/9 No.137

犯罪実話特集はぱっとしませんが、巻末のワイリーで満足しました。

題名 作者 評点 コメント
機智の戦い ミリアム・シャーマン 7.5 息子の復讐にやってきた男と校長の緊迫感あるやり取りが面白い。
押しこむのにもってこいの、ちいさいが、ごきげんな銀行 イヴァン・M・ワイリー 3.0 つまらない銀行強盗の話。
老宝石商 フィリップ・ワイリー 7.0 宝石泥棒とそれを出し抜く宝石商。ニヤリとさせられるラストが良い。
未来犯罪捜査課 ロイド・ビッグル・ジュニア 5.0 近未来を舞台にしたSFミステリなのだが、ストーリーは古臭い。
煮られた女 アラン・ハインド 6.0 妻を苛性ソーダで溶かした男の裁判。これ実話なのか。
基地ふたたび コリン・ワトスン 2.0 何が書きたいのか理解できない。
迫りよる死 スタンリイ・エリン 6.0 推理作家の犯罪実話その1。ラストにちょっとした挿話を入れるところはさすが。
銃痕 エドワード・レイディン 6.5 推理作家の犯罪実話その2。ミステリさながらの殺人。
ある完全犯罪 E・S・ガードナー 5.0 推理作家の犯罪実話その3。事件をいろいろな角度から解析するというプロセスは面白いが、少し複雑すぎる。
鐘楼の死体 レスリー・チャータリス 4.0 推理作家の犯罪実話その4。詰め込み過ぎで筋を取るのが難しい。
砂浜の手首 ナイオ・マーシュ 6.0 推理作家の犯罪実話その5。保険金詐欺と殺人。残された謎を指摘しているのが興味深い。
パークマン博士の失踪 エドマンド・ピアスン 6.0 事件の説明はうまいが、特にひねりがあるわけではない。実話だから致し方ないか。
ローマの休日 ロバート・ルイス 5.0 フェンシングでの決闘の話だが、場違いである。
パラダイス・キャニヨンの死 フィリップ・ワイリー 8.0 砂漠での射殺事件。逃亡した医師が犯人と目されたが、彼も刺殺体で発見される。軽快な展開で読ませる。
怪船マジック・クリスチャン号4 テリー・サザーン
名誉ある社会1 ノーマン・ルイス
アメリカの裁判 早川武男
犯罪実話雑誌入門 小鷹信光
犯罪実話の魅力 大原寿人
世界星犯罪事件簿
ベルが鳴っている 福田淳
地獄の仏 石川喬司
私の好きなベスト5 青木雨彦 犯罪実話
ミステリ診察室 ボストンの絞殺魔
ノンフィクションガイド 青木雨彦
著者と立ち話 「円形の賭け」の三好徹
名作ダイジェスト 「消えた男」エドガー・ボウル
海外ミステリ消息
響きと怒り
ミステリ駒漫画 粛正 梅田秀俊
表紙 表紙の言葉 真鍋博
目次・扉 真鍋博
イラスト 勝呂忠・真鍋博・金森達・新井苑子・池田拓・伊藤直樹・岩渕慶造
ページ 202ページ
定価 200円

特集は「犯罪実話」。「事実は小説より奇なり」と言いますが、人間の想像力を上回るような犯罪事件がそうあるわけもなく、水準以上の作品は見当たりませんでした。

今号の目玉は、何と言っても巻末中編、フィリップ・ワイリー「パラダイス・キャニヨンの死」でしょう。エキゾティックな舞台での殺人事件、好感の持てる探偵役とラストのハッピーエンドという展開は期待を裏切りません。ワイリーは、このところ本誌に、「雪嵐殺人事件(1965/06)」「やすやすとは殺されない(1966/08)」、 「考古学博物館の殺人(1966-12)」と連続して掲載されていますが、どれも楽しく読めます。EQMM時代に好きだったゴードン・ギャスキルの作風に似たところもあって好みなのですが、残念ながら邦訳はこれでおしまいのようです。