The Assassin in the Greenwood ( Paul Doherty )
今回はなんとロビン・フッド登場。作者のサービス精神に感心するも、ストーリー展開は短調、ミステリとしては小粒でした。
The Prince of Darkness(1992)、Murder Wears a Cowl(1992)に続く、Paul DohertyのHugh Corbett物第7作「The Assassin in the Greenwood(1993)」を読んでみます。
ロビン・フッドが登場だ!!
今回のCorbertの相手は、なんとロビン・フッド。「ロビンフッド」とGoogleで検索すると、
Robin Hood. イギリスの伝説的英雄。実在の人物か、中世のバラッドがつくった人物か、出自については諸説がある。12世紀ごろシャーウッドの森にリトル・ジョンやタック修道士らの仲間と住み着き、悪代官や横暴なノルマン貴族、僧侶(そうりょ)から金品を奪い、貧者に分け与えたと伝えられる。
という解説が出てきます。
個人的には、まあ何やら弓の達人のようなイメージしかありませんね。そう言えば、その昔榊原郁恵が「いとしのロビン・フッドさま」なんて曲を歌っていたよなあ、どうでもいいけど(笑)。
この人物を作品のモティーフにするとは、さすがDoherty、やってくれます。
こんな話
時は1302年夏。
Hugh Corbettは、Edward一世の命を受け、Nottinghamに出向くことになった。今回の司令は、ロビン・フッド一味の拘束である。
ロビン・フッドは金持ちから金品を略奪はするものの、貧しい人に与えるという義賊として有名であり、その際には無益な殺生を避けることで知られていた。しかし、このところ、その犯罪行為が目に余るようになってきていたのである。政府の徴税吏を襲い、本人以外を皆殺しにしたうえ、彼の指を切り落とすという残虐行為には、王も見過ごすことはできなかったのである。
さらに、ロビンが潜んでいるNottingham地方を統治している保安官、Sir Eustace Vecheyが謎の死を遂げたという報告まで来ているのであった。保安官は何らかの毒物を盛られたようである。しかし、用心深い彼は料理、飲物を事前に配下に毒味させており、毒殺とすればその手段が不明なのだ。
Corbettは別の難題も抱えていた。暗号を解読し、フランスのイングランド侵攻を阻止することも急務なのである。そんなCorbettに、さらなる脅威が知らされる。なんと、フランスが、Achitophelという暗殺者を送り込んだというのである。もちろん、ターゲットはCorbett自身なのであった..。
前にも書きましたけど、主人公のHugh Corbettは、「王の片腕」と呼ばれ、Sirの称号まで持つ偉い人なのですが、いつものように腹心のRanulfと馬丁のMaltoteのみを引き連れ、現地に出向くことになります。これだけのメンツで、ロビン・フッドに対抗、毒殺事件を解決し、暗号まで解読するというのは、どう見ても無理だと思うのですが..(笑)。
調査を進めるCorbettは、なぜロビンが急にこれほど冷酷になったのかをいぶかる。また、Nottingham城内に裏切り者がいるのではないか、という疑いを強くするのであった..。
読み終えると..
さて、これぐらいの題材があれば、デュマなら軽く1000ページの長編を書いてしまうでしょうが、残念ながらDohertyにそのような資質はありません。この作品も大きなひねりもなく単純に話が進行するだけなので、ストーリーの広がりや意外な展開といった物語としての面白さに欠けています。このあたりが作者の限界なのでしょう。
ミステリーとしてみると、「犯人はこいつしかいない」のは明確なので、ほとんど意外性はありません。毒殺トリックも小粒で、「そんな手があったの」程度の出来ですので、あまり高い評価はできません。
今回笑ってしまったのが、フランスからわざわざやってきた暗殺者。ロビン・フッド討伐騒ぎに巻き込まれ、何もできずあえない最後を遂げてしまいます。その末路には同情を禁じ得ませんが、あんた本当にフランスを代表するプロだったのかあ(笑)。