HMM 1970/2 No.166

読み切り短編は6篇のみ。巻末のブロックが読ませます。

題名 作者 評点 コメント
一握りの金 ヘンリー・スレッサー & ジェイ・フォルプ 7.0 ポーカーで巻き上げられた男、妻には強盗に取られたと言い訳をするのだが..。ラストはスッキリとまとまっている。
魔王と賭博師 ロバート・アーサー 7.5 魔王を逆手に取る賭博師が楽しい。
テロリスト マイケル・ギルバート 2.0 視点がころころ変わるので筋を取るのも一苦労。いやになった。
ドミニック卿の契約 J・S・ル・ファニュ 4.0 何のオチもない話。
フェルマーの問題 アーサー・ポージス 5.0 フェルマーの式を悪魔に解かせる数学者。オチがよくわからん。
ポー蒐集家 ロバート・ブロック 8.5 募集家の執念を迫力のある展開で読ませる。
大都会5 最終回 ケイティついに結婚する リング・ラードナー
クラレンス・ダロウは弁護する15 アーヴィング・ストーン
麻薬運河2 アリステア・マクリーン
フランス旅行者必携の恐怖小説 ウィリアム・アイヴァーゼン
悪魔の尻尾 矢野浩三郎
敗戦時の父 林峻一郎
私論・松本清張 福田淳
新・進化した猿たち 星新一
深夜の饗宴 小林信彦 獅子文六 – 風俗とエスプリへの正体
死刑執行人 脇坂一郎
みすてり鳥瞰図 福田淳
紐育の日本人 平尾圭吾 推理作家群像 1 ロバート・L・フィッシュ
ミステリ診察室 酸っぱいレモン – R・スターク
ノンフィクションガイド 青木雨彦 人間的な、あまりに人間的な
街角のあなた
海外ミステリ消息
響きと怒り
ミステリ一駒漫画 梅田秀俊
表紙 表紙の言葉 真鍋博
目次・扉 真鍋博
イラスト 勝呂忠・真鍋博・金森達・池田拓・伊藤直樹・桜井一・楢喜八・山野辺進・畑農輝雄
ページ 202ページ
定価 230円

巻頭言で太田博編集長がこんなことを書いています。

11月28日づけの読売新聞に「最近の大衆文学」と題する大井広介氏の文章が載っていました。お読みになった方も多いと思いますが、翻訳ものに触れた個所を読んでヤレヤレと嘆息が出てしまいました。
その個所の文脈は千鳥足になっていて、何をいいたいのかよくわかりませんが、こちらで論旨をおぎなってみると, こういうことらしい。

大田のまとめもわかりにくいのですが、大井評論の趣旨は「『シャドウボクサー』を読んで腹が立った。早川書房はスパイものばかり出しているが、翻訳スパイものの大半は米英が善玉, ナチスの残党や中国が悪玉になっている のがケシカラン。ハヤカワ・ノヴェルズはスパイ・ノヴェルズと改称したがよさそう」という内容だったようです。
これに対し太田は、「数字的にもおかしいし、『シャドウボクサー』はそもそも「スパイ小説というより冒険小説に近い内容のもの」だと反論した上で、

いったん取り上げたならホメルにしろクサスにしろ, 一応の理由はつけるべきでしょう。「野放図」な文章も、ここまでくれば立派というべきです。

と最後に言い放っているのです。

大井廣介といえば、本誌の前身 EQMM1960年1月からHMM1967年1月まで、7年に渡って連載された「紙上殺人現場」の執筆者。のみならず、「短編コンテスト」では審査員を努めていたような人物で、客観的に見ると評論家の中では本誌と最も関係の深かった人物、功労者とも言える存在です。その人物に対して、この不遜な言い方はいかがなものかと呆れてしまいました。
そもそも、「文脈は千鳥足」で「野放図」な文章を書くような評論家を、7年に渡って連載させてきたのは一体どこだったのか、自分の立場をよく考えて発言すべきしょう。
その後何か反応があったの次号以降を見てみましたが、特に何も言及されていませんでした。

さて、本語の特集は「悪魔との契約」。ロバート・アーサー、ル・ファニュ、ポージスの三篇が対象ですが、アーサーの「魔王と賭博師」がなかなかの出来。
それ以上に印象に残るのは、ロバート・ブロックの「ポー蒐集家」。だいたい異常な収集家の話は読ませますが、「アッシャー家の没落」を思わせるラストまで見事な出来です。