Death and the Maiden ( Q.Patrick )

後半のめくるめく展開が素晴らしい。ストーリー展開の巧さと意外な展開に感心しました。



 Q.Patrick は、Patrick Quentin の別名。WIKIPEDIAによると、

パトリック・クェンティン(Patrick Quentin)は、リチャード・ウィルソン・ウェッブ(Richard Wilson Webb, 1901-1966)、ヒュー・キャリンガム・ホイーラー(Hugh Callingham Wheeler, 1912-1987)、マーサ・モット・ケリー(Martha Mott Kelley, 1906-2005)、メアリ・ルイーズ・アズウェル(Mary Louise White Aswell, 1902-1984)が探偵小説を執筆する際に用いたペンネーム。作品・シリーズによって「Q・パトリック(Q. Patrick)」「ジョナサン・スタッグ(Jonathan Stagge)」の別名義を使い分けている。

とのこと。
上記によれば、この作品 Death and the Maiden (1939) は、ウェッブとホイーラーの合作のようです。


こんな話

 舞台は、ニューヨーク近くの大学、Wentworth College。そこに通う女子学生 Lee Lovering の一人称で展開します。

 Lee のルームメイトである Grace Hough は、富豪の娘であったが、父親が事業に失敗、自殺を遂げるという悲劇にみまわれる。大学の学費は保証されているものの、その後の生活への不安もあり、彼女は学校では孤立した存在になりつつあった。
Lee は、Grace の弟である Jerry Hough に思いを寄せているのだが、Jerry は学校一の人気女子学生である Norma Sayler に惹かれているようであった。

 有力者の息子である Steve Carteris が主催するパーティの夜、Lee は、Grace が海軍服の男と会っているところを目撃する。また、その後、Grace が劇場で大学の教授である Robert Hudnutt と口論するところも見てしまう。
Robert は、かつて同僚の教授である Marcia Prescott と婚約をしていたのだが、現在は女子学部長の Penelope と結婚している。Grace は、Robert に思いを寄せていたこともあり、Lee には、そのやり取りが気になるところであった。

 翌朝、Lee は、Grace がまだ部屋に戻っていないことに気がつく。彼女を心配する Lee は、その直後学長室に呼び出されるのだが、彼女の前に現れたのは、ニューヨーク警察の Lieutenant Trant であった。
彼は近くの川で女性の死体が発見されたことを告げる。Lee は、Trant とともに確認に出向くが、それは、紛れもなく Grace の死体であった。後頭部に打撲があることから、彼女は死後、川に破棄されたものと推定された。

 生前に口論していた Robert は有力な容疑者であったが、一定のアリバイが確認される。また、Grace は、弟の Jerry と相互受取とする生命保険に入っており、Jerry は巨額の保険金を受け取ることになるため、その疑惑も捨てきれない。

 捜査の中で、Garce は、生前関係者に3通の手紙を送り、また自身も1通受け取っていたことが判明する。犯行当日、彼女はその手紙に動かされていたように思われるのだが..。


読み終わると...

 物語の語り手である女子学生 Lee Lovering は、Lieutenant Trant から捜査協力を依頼され、事件に巻き込まれていくことになるのですが、特に積極的な行動にであるわけではなく、ただ流れに任せたような恰好。それどころか、男に言い寄られて浮かれてしまう有様ですから、あまり緊迫感はありません。中盤までゆったりとした展開ですが、作者の語り口がうまいので退屈しません。

 しかし、次の殺人事件が起きてから、話は一気に盛り上がっていきます。さらに、とある人物の告白によって新たな側面を見せはじめ、事件当日における Grace の行動や、手紙の行方などそれまでの謎が次々と洗い出されていき、この事件の本当の動機が浮かび上がってきます。ラストは作者の巧なミスディレクションに焦らされながら、もう一度ひねられるのですが、最後の最後まで本当に楽しませてもらいました。
この作品、中盤から後半に至る緊張感が実に素晴らしい出来。こんなに面白いのに、なんで翻訳が出ないのだろうか。


BOOKS, Inc Midnite MYSTERIES
!st Printing, AUGUSt, 1944
2nd Printing, DECEMBER, 1945
308 pages