The Desert Moon mystery ( Kay Cleaver Strahan )
考えられた構成には感心しますが、中盤の展開が単調。結末も予想がついてしまいました。
Kay Cleaver Strahan(1988-1941) の作品は、先に読んだ「Footprints(1929)」が良い出来だったので、今回は「The Desert Moon mystery(1927)」を読んでみます。発表年はこの作品のほうが先ですね。
こんな話
舞台となるのは、富豪であり地元の有力者である Sam Stanley が住むDesert Moon Ranch。彼は現在独身であったが、家庭を Housekeeper である Mary Magin に任せ、John と Martha の二人を引取り養子としていた。息子の John は、彼の後継者であるが、娘の Martha には知的障害があり、その世話役として Mrs. Ricker が雇われていた。また、彼は気に入った Chadwick Caufield と Hubert Hand という二人の男を居候として同居させていた。
実は、Sam には妻があったのだが、彼女は違う男と家を出てしまったという過去があった。元妻は家を出た後に双子の娘をもうけたが死亡。相手の男はどうしようもない男で、強盗を犯し現在は刑務所に収容されているのだという。それでも Sam は、先妻の面影を残す娘たちに執着しており、どちらかを息子の John と見合わせたいという強い希望を持っていた。
そんなある日、その双子の娘、Danielle と Gabrielle が休養という名目で牧場に現れたことから、一家に悲劇が襲いかかる..。
Sam の意向を受けたように、John は、Danielle に惹かれ、二人の仲はまもなく婚約というところまで進展する。しかし、双子の片割れである Gabrielle は、それが面白くないようで、John を自分に譲るよう Danielle に迫っていた。
二人の口論を聞いてしまった Mary だが、彼女はまた、双子の娘たちが邸宅の屋根裏から離れまであらゆる場所をうろつき、何かを探し回っていることにも気づく。明らかに彼女たちは明確な目的があって、ここに来ているのだ。
そんな Mary の不安を裏付けるように、双子の片割れ Gabrielle が屋根裏部屋の階段で絞殺されてしまう。しかも、同時に居候の Chadwick Caufield までが死体で発見される。彼は Gabrielle に惚れていたが、見向きもされないことを恨み彼女を殺害、その後自殺したように思われた。
しかし、主人の Sam は Chadwick の無実を信じており、真相究明を図る。彼は双子の父親である Dan Canneziano が最近保釈になったことから疑いをかけるが、刑務所の出所日付から事件に関わりはないことがわかる。その Dan は娘の死を知り、ここにやってくるという。
そんな中、今度は娘の Martha まで亡くなってしまう。悲観にくれた Sam は、犯罪研究家として名高い Lynn MacDonald に事件の調査を依頼する..。
読み終わると...
物語は Housekeeper の Mary Magin の一人称で進んでいきます。この前に読んだ Q.Patrick の 「Death and the Maiden」 も女性の一人称でしたが、あちらはピチピチの女子大生(こんな表現、死語かな(笑))が主人公、こちらは中年の家政婦、あまり派手な展開は望めません。
また、事件そのものは殺人者が自殺した形で決着しているため、警察関係者が介入してくることもなく、すべて一家の中での展開に終止します。作者は中盤から登場人物の意外な告白や他者への告発、アリバイの検討などを盛り込み、平板な展開を避けようと多くの手法を用いていますが、それでも単調さは否めません。
終盤、探偵役である Lynn MacDonald が登場してから事件は動きを見せますが、残念ながら作者が仕掛けているトリックや犯人の正体は、ミステリファンなら容易に推察してしまうでしょう。
しかし、この作品、決して悪い出来ではありません。前作の「Footprints(1929)」で
Kay Cleaver Strahan は、謎を重視しない女性好みのロマンス派、いわゆる「Had I But Known(もし知ってさえいたら)派」と言われているようですが、この作品を読む限り、作中で展開される分析ロジックも論理的で、ミステリとしても十分しっかりした構成を持っているように思えます。
と書きましたが、この作品も同様、しっかりしたミステリだと思います。中盤の展開がやや細かすぎ、ついて行き難いところがあるのですが、作者がじっくり考え抜いていることはよくわかります。
作品の入手について.
Kay Cleaver Strahan の作品は著作権が切れているようなので、Project Gutenberg から無料でダウンロードすることができます。今回はこちらを利用させていただきました。ありがとうございます。