Android黎明期のクラムシェルたち ( その7 Dynabook AZにはLinux )
Dynabook AZにUbuntu 13.04、13.10をインストールする。
なんとUbuntuが消えている...
Android黎明期のクラムシェルたち(その5 Dynabook AZの復活劇を振り返る)にも触れましたが,Dynabook AZ(AC100)用のUbuntuは,11.04から13、10までCarnicalで正式版がサポートされていました。
さて、この文書を書くにあたり、確認のため久方ぶりにダウンロードサイトにアクセスしてみたのですが,愕然としました。なんと「AZ用のインストールファイルが軒並み消えている」のです。
そうなのか、このマシンはすでに見放されていたのか。
そういうわけで,いささかモチベーションが落ちていますが,ここまでDynabook AZについて記述してきたことでもありますし、続けましょう。AZに対するレクイエムとでもしておきましょうか。
なお、正規サイトではありませんが、13.04のインストールファイルが、ここにありました。最終バージョンである13.10は、残念ながら見つけることはできませんでした。今回は、発見できた13.04をベースにしますが、13.10での注意点も付記しておきます。
まずは、インストール手順を簡単に説明します。AZをリカバリーモードにする手順などについては、Android黎明期のクラムシェルたち(その6 Dynabook AZにロシアンROMとAndroid4の説明を参考にしてください。
(1)ファイルのダウンロード
上記サイトから、
lubuntu-13.04-preinstalled-desktop-armhf+ac100.bootimg
lubuntu-13.04-preinstalled-desktop-armhf+ac100.tar.gz
の2ファイルをダウンロードします。
2番めのファイル”lubuntu-13.04-preinstalled-desktop-armhf+ac100.tar.gz”を、フォーマットしたUSBあるいはSDカードのルートにコピーしておきます。
(2)ブートローダーの書き込み
まずは、AZをリカバリーモードにします。
- PCとAZをUSB miniケーブルで接続。
- AZのESC+CTRLキーを押しながら、電源ボタンON。
続けてnvflashで、”lubuntu-13.04-preinstalled-desktop-armhf+ac100.bootimg”を書き込みます。
$ nvflash --bl /usr/lib/nvflash/fastboot.bin --download 6 lubuntu-13.04-preinstalled-desktop-armhf+ac100.bootimg
”success”で処理が終わったことを確認、電源ボタン長押しで電源をOFFにします。
(3)インストール
”lubuntu-13.04-preinstalled-desktop-armhf+ac100.tar.gz”を入れたUSBあるいはSDカードをAZに挿して、電源をONします。
USBブートの場合、SDスロットにカードを入れておくと、SDがインストールのターゲットになりますので注意してください。ということは、SDカード上にもUbuntuインストールが可能ということです。
ブートローダーがrootfsのファイルをチェックしているという文字が表示され、本当に書き込んで良いか聞かれますので、”y”を入力し、先に進みましょう。完了後、自動的に再起動、Lubuntuが立ち上がり、セットアップが始まます。
(4)セットアップ
ここからの設定は、通常のUbuntuと同じですので、Wi-fiの設定をしてから先に進めます。
13.04は問題ないのですが、13.10の場合、インストール時にWi-fiが繋がらないというバグがあります。これは、ここにあるように、”apparmor”の問題ですので、”Wi-Fiネットワークに今すぐには接続しない”を選択して先に進めましょう。
一応のセットアップが完了すると、Lubuntuが立ち上がります。
(5)システム更新と日本語環境整備
ここから、環境整備を進めます。
まず、13.10の場合は、Wi-fiを使えるようにしないと先に進めません。
”apparmor_2.8.0-0ubuntu31.1_armhf.deb”をここから、ダウンロード、ターミナルを開いてインストールを行います。
$ sudo dpkg -i apparmor_2.8.0-0ubuntu31.1_armhf.deb
これで、Wi-fiが使えるはずですので、接続します。
さて、13.04、13.10を問わず、この段階でキーボードは英語モードであるうえに、バックスラッシュ”\”と、アンダースコア”_”が打てません。さらに、/etc/apt/sources.list内のRepositoryには、Ubuntu13(Saucy)関係は、すでになくなっていますので、そのあたりも変更する必要があります。また、日本語関係も不十分です。
これらを一気に解消するシェル(ここでは、”x.sh”とします)を作っておき、USB経由でコピーしておきましょう。
#!/bin/bash
# sources.listの変更。
sudo sed -i -e 's/ports.ubuntu.com\/ubuntu-ports\//old-releases.ubuntu.com\/ubuntu\//g' /etc/apt/sources.list
sudo apt-get update
sudo apt-get -y upgrade
# 日本語関係の設定。
sudo apt-get -y install language-pack-ja
sudo update-locale LANG=ja_JP.UTF-8
# デフォルトではibus-anthyが導入されますが、fcitx-mozcに変更します。
sudo apt-get -y install fcitx-mozc
# ”\”、”|”を使えるようにする。
cat >> $HOME/.Xmodmap <<END
keycode 81 = backslash bar
keycode 84 = backslash underscore
END
これを実行します。
$ chmod +x x.sh
$ ./x.sh
完了後、メニューの 「設定」→「言語サポート」をクリックし、不十分な部分をインストールします。
続けて、この画面上の「キーボード入力に使うIMシステム」を「fcitx」に変更してから、「システム全体に適用」をクリックします。
なお、13.10では、”$HOME/.bashrc”に下記の設定が必要です。
export GTK_IM_MODULE=fcitx
export QT_IM_MODULE=fcitx
export XMODIFIERS=@im=fcitx
export DefaultIMModule=fcitx
以上で、日本語関係の環境整備は完了。ここで、再起動します。
(6)fcitx設定
メニューから、「設定」→「Fcitx設定」を開きます。
何らかの表示がされると思いますが、ブランク画面の場合、fcitxが起動していません。その場合は、ターミナルを開いて、fcitxデーモンを起動してみます(13.10の場合、この状態になる)。
$ /usr/bin/fcitx &
さらに、fcitxの自動起動を設定しておきましょう(同上13.10のみ)。
「設定」→「Default application for LXSession」を開きます。この画面で、”/usr/bin/fcitx”を指定します。
ここから「日本語キーボード」に設定を変更します。
「Fcitx設定」の画面下にある”+”を押し、出てくる一覧画面から”Keyboard - 日本語”を選択します。
さらに、”^”キーで、”Mozc”の上部へ押し上げます。また、「英語キーボード」を、”ー”で削除しておきましょう。
上の画面の状態になれば、OKです。
ターミナルを開いて、”半/全”キーを押してみます。mozcの変換画面になるはずです。また、キーボードの印字通りに記号が入力できること、”\”、”|”が入力できることも確認しておきましょう。
(7)アプリケーションのインストール
ここからは適当にアプリケーションをインストールしていきます。わたしは、こんな感じで導入しました。
$ sudo apt-get -y install emacs emacs-mozc fonts-takao nkf curl git build-essential gparted python3-pandas python3-pip gnome-screenshot
(8)その他
ちょっとしたポイントを書いておきます。
1)画面がブラックアウトしたとき
長時間処理が続いた場合など、AZの画面がブラックアウトしてしまう時があります。適当なキーを叩いても戻ってこないので、暴走かと焦ってしまいますが、その時には慌てず騒がず、
まずは、CTRL+ALT+最上段7番目のキー(モニタ切り替え)、続けてCTRL+ALT+最上段9番目のキー(輝度アップ)を押すこと
で対応しましょう。戻ってくるはずです。
2)Backlight
インストール後の画面は、かなりの高輝度になっているので、これを修正します。
残念ながら上部のキーは効きません。”/sys/devices/platform/pwm-backlight/backlight/pwm-backlight/brightness”が設定ファイルなので、この数値を変更します。初期値は”224”なので、これを適当な数値に変更します。毎回するのは面倒なので、rc.local(懐かしいね)にでも入れておきましょう。
# /etc/rc.local
chmod 666 /sys/devices/platform/pwm-backlight/backlight/pwm-backlight/brightness
echo 100 > /sys/devices/platform/pwm-backlight/backlight/pwm-backlight/brightness
echoの数字が明るさです。
5年ぶりに使ってみて...
電源オンからの起動は35秒程度。わたしのメインPCより速いぐらいですし、スリープなども問題なく機能します。バッテリーも個体差はあるでしょうが、4時間程度は使えそうです。
このように、一通りの動作は問題ありませんが、やはり古臭さは隠せません。特に動画関係は壊滅的です。ブラウザは動きますが、Youtubeはサポート外で使えません。高品質な動画は、画面が音声に追いついてこられません。この分野を重視するなら、もはや見放されて当然のマシンであることは間違いないでしょう。
今回は環境セットアップ後、この文章をAZのEmacsで入力してみましたが、特にストレスを感じることなく作業が進みました。この用途ならば、まだ使い途はありそうです。愛着のあるマシンでもありますから、今後も時々取り出して遊んでやろうと思っています。